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月曜日(6)(side 凪桜)
「上野!久しぶりだなぁ。前に来た時はネコに餌をあげてるおじさんに出会ったよ」
上野で案内板の前に立つといろいろな企画展や展示をされている期間だったけれど、残念ながら今日は月曜日だ。
「あー月曜は公共の施設は休みだよね」
「面白そうなの沢山あるのに」
どちらともなく残念な思いを言葉を口にしながら噴水池の方へ歩きだし景色や人をながめる。噴水の周りでは寝転んでいる人もいて
「大人と言われる年齢になってから外であんな風に昼寝したことないね」
と言うと真誠さんも同意した。
「気持ち良さそうで羨ましいけどできないな、無防備すぎる」
もっと気の置けない仲になってこうやって公園に来たら並んで寝転んで、時間を気にせずいろいろ話したり昼寝できたりするのかなと想像する。でも真誠さんはそういうの苦手かもしれない。なんとなく綺麗好きな印象、潔癖とまでは言わないけど。
風景を撮りながら立ち止まると真誠さんはスマホで地図を見始めた。
「このまま谷中のほうへ行こうか」
「この辺は気になる建物や景色があるからいいね」
ほとんど人のいない歩道を並んで歩き出す。僕は時々止まって写真を撮り、ふと思い出したたわいもない話をした。真誠さんはさすがに知識が豊富だからどんな話も膨らむような言葉を返してくれる。それが楽しくて足はテンポよく前に進む。
「博物館動物園駅だって。ここが駅だったみたい」
小さな箱みたいな、でも細かくて凝った装飾がされている建物に付いているプレートを読んで写真を撮る。
「気にしないで通り過ぎてた。気がついてなかった」
真誠さんがちょっと目を見開いて建物を見回しているのをみると一人で歩くのもいいけど二人の良さを実感した。二人分の目があるってきっと二人分以上の広がりがある。お互いに気になるものを指差しながらあちこち話題が飛んでいく。
寛永寺を通り過ぎて言問通りに出ると一本内側の住宅街に入った。僕が普通の家を見たかったからで、真誠さんはあんまり興味はないかと思いつつ建物の特徴や道の様子など思ったことを口にして歩いた。
「あの瓦の屋根の途中に簾がかけてあるけど、あれはきっと明かり取り用の天窓なんだ」
なんて、きっと全然興味ないだろう、いつか小説書くときの端の端くらいに必要な知識になればいいなと思いつつ昭和初期くらいの長屋を立ち止まって見上げた。
「そうなんだ!言われないと全然見ないところだから気がつかなかった」
どうでもいいんじゃないかと思ったことにも興味を持ってくれる。僕が勝手に呟くこともきっと聞いてくれてる。
そう思ったらずっと真誠さんと居られる気がして一層足取りが軽くなった。
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