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月曜日(14)(side 凪桜)

真誠さんは普通に家ご飯の提案をしてきた。そんなつもりじゃなかったけど、また一歩近づけた。というか、入口を広げてくれたから嬉しくて、驚いてもいた。 勝手な真誠さんのイメージなんだけど、自分のテリトリーである自宅には誰も入れないんじゃないかと思っていた。 「カセットコンロ持ってるなんて、真誠さんは自炊派じゃん」 「鍋は簡単だし野菜を沢山食べることが出来るから」 ちょっと恥ずかしそうに言ってるのはなんでだろう。あまり料理は得意じゃないのかな。僕も得意じゃないけど。 商店街に足を進めると急に人が増えて驚く。さっきまでのお店の雰囲気とは違って縁日の屋台が続くような賑やかさ。買い物するならさっきの肉屋さんや八百屋さんだけど楽しむために歩くならこっちなのかな。 真誠さんはどこのお店の前でも静かに眺めている。あまり物欲はないのかもしれない。僕は目に入るものに何でも吸い寄せられ興味を持ってしまう。そして必要なのかそうでないのか、どうしても欲しいのかそうでもないのか、毎回葛藤している。 そんな様子をにこにこしながら見ているんだよなぁ。 「どうしても要るものじゃないから悩む」 と言うと 「わかるよ、なぜか惹かれるものって理屈じゃないからね」 と言っていたから、物欲が無いわけじゃないらしくてちょっと安心した。僕は意味なくものを買うからその気持ちは説明しがたい。 何件かの店先でそんな心の葛藤を繰り返しているうちに商店街の終点に来た。先にはテレビのCMやドラマなんかでよく見る階段がある。 脇にあるコンクリートの坂道にキャリーバッグを乗せガラガラと引きあげる。真誠さんは少し後ろから押し上げてくれた。 一番上では立ち止まって坂の下方面を見ている人が沢山いる。道路脇には本格的なカメラを三脚で構えている人がいて不思議に思い振り返ると、ちょうど夕陽が遠くの建物の向こうに沈むタイミングだった。皆、これを撮っているのか。ここにいるほとんどの人がスマホを太陽に向けている。 僕も階段の下の商店街を数枚撮った後、夕陽にスマホをかざした。真誠さんも撮っている。 「もう少し下に向けて、写したいところをタッチすると、ちゃんと写るよ」 真誠さんにちょっと撮り方のアドバイスをしてからまた夕陽が沈むまで角度や明るさを変え数枚写して横を見た。 「真誠さんも撮れた?」 「う、うん」 なんとなく歯切れの悪い返事だったけど、上手く撮れてなかったら僕の撮ったのを送ってあげてもいいと思った。 でも、やっぱり後で見せてもらおうかな。

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