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月曜日の夜(2)(side 凪桜)

スーパーがコンパクトにまとまってる!街中のスーパーは効率よくできてるもんだな。 真誠さんと夕食の買い物するとは、予想外すぎて本当に今日は疲れる暇もない。真誠さんと鍋をするなんて明治村の牛鍋から二回目だなぁ。というか、家で人と鍋をつつくとかいつ以来なんだろう。 「白菜とか水分が沢山出る野菜だと汁が甘くなっていいよねー」 「真誠さんはどんなのが好き?」 テンションが上がって1人で喋ってる。そうか、チーズが好きなのか。僕も好きだ。食べ物の好みに少しでも共通点があるだけでかなり親しくなれたような気がする。いつもとは違う、少し高いポン酢を張り切って選んだのは美味しい思い出はずっと残ると思ってるから。 やっぱりお酒も買うよね。 「ビールはそんなに飲まないんだけど。真誠さんは何がいいの?」 「ビールは飲むよ、よかったら冷蔵庫にあるから」 お酒を浴びるほど飲む年齢はお互いに過ぎている。適度にと梅酒やソーダをカゴに入れて会計を済ますと真誠さんは何か買い物があるらしく二階に行ってしまった。 僕は荷物と一緒にベンチで待った。 知らない街を行き交う人達がやけに遠く感じてポツンと違う世界にいるようで怖いとか寂しいとかそんなんじゃないけど何かツンとする感覚になった。人の動きがスローモーションだなぁと思っていたら真誠さんが帰ってきた。 たぶんほんの少しの間だった、本当に短い時間、僕は本当は寂しかった。 「お待たせ、行こう」 その言葉は遠くなった現実世界に僕を引き寄せた。 キラキラと明るい街中は人がたくさんいる上に居酒屋のキャッチが次々と声をかけてくる。まるでRPGゲームのダンジョンを進む勇者と旅を共にする仲間のように、まとわりつく村人を無視して僕は真誠さんの後ろを歩いて行く。 郊外のそれもかなり田舎の小さな家に住む僕からしたら真誠さんの住む家もダンジョンに入る感覚かもしれない。鍋も久しぶりなら人の家に上がるのも久しぶりだ。 ドアをあけてもらって招き入れられる。シンプルで片付いた玄関。真誠さんはやっぱり几帳面なんだと思った。スリッパは来客用かな、なんか新しいみたいだけど。 「どうぞ、リビングはないけどその辺に荷物置いて」 「お邪魔します」 キャリーバッグはとりあえず玄関に置いたまま買い物袋をキッチンの流しの前に置いた。 「まだ時間早いしご飯も炊くから、よかったらシャワー浴びて」 真誠さんにそう言われて僕はどういう選択があるのかなと、またゲームを思い浮かべた。 「来ていきなりなんか申し訳ない気がする」 「今日は意外と暑かったし、遠慮しないでいいよ。さっき待っててもらった時に勝手に下着とか買ってきたんだ。良かったらこれ」 と、買い物袋から下着と靴下を出して手渡された。真誠さん、なんて気がつく人なんだ。 「え?すごい、真誠さんはやっぱり頭の回転早い!」 ちょっと目を逸らしながら 「そんなことないけど」 という言い方がなんだか照れてるみたい。僕は遠慮なく従うことにした、この部屋の主に。 「ありがとう、じゃお先に使わせてもらうね」 玄関脇の衝立の陰で素早く服を脱ぐと浴室に入った。新しくはないけれどとても綺麗に掃除が行き届いていて清潔感がある。まるでホテルのよう。 きっちりと並べられたシャンプーのポンプを押しながら自分の生活の適当さについての言い訳を考えた。

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