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月曜日の夜(9)(side 真誠)
チーズとネギを入れた雑炊は、妹たちに習った。習ったというか、妹たちはしゃべるのに忙しく、会話の合間に俺に指示だけ出して、俺に作らせるのだ。
俺を巻き込むなよと言いたいが、彼女たちが母親の腹に宿った頃からの思い出が積み重なっていると、どれだけ鬱陶しくても邪険にはしがたい。つい負けて招き入れてしまう。
自分から招いたのは凪桜さんが初めてなんだけど、そんなことをわざわざ言ったところで気を使わせそうで、美味しいと言うのも忘れたと笑いながら雑炊を食べてくれる凪桜さんと一緒に黙って雑炊を食べた。
「コンビニまでデザート買いに行かない?」
鍋で熱くなった舌を冷ますのに、それはいい案だ。
スウェットにトレンチコートを一枚羽織って、ポケットに両手を突っ込み、のんびり川沿いの道を歩く。
空気も川も濁っているし、空は川幅と同じだけしか見えない。街の灯りが強すぎて、目で追えるのは一等星だけ。
自分の生まれ育った街を悪く言いたくはないが、褒め言葉も見つからない。隣を歩く凪桜さんは楽しそうだけど、やっぱりこの街の景色は凪桜さんに全然似合っていなくて、ふとどこかへ引っ越そうかなと思った。
文学賞の受賞が内定した瞬間から、仕事が殺到した。どれも小手試し、それが瞬間最大風速で、その風を掴まなければ次はない。この半年くらいはがむしゃらだったから、現実逃避したいのかもしれなかった。
夜の街で白い光を放つコンビニに足を踏み入れ、棚を見回しながら凪桜さんは楽しそうだ。
「何買う?」
一緒に軽やかな気分になって声を掛けると、凪桜さんは即答した。
「僕はアイスかな」
「だよねー」
意見が一致するだけでもこんなにも嬉しい。一緒にアイスケースの前に立つと、凪桜さんは明るい声を出した。
「お互いの好きなアイスを当てっこしよう」
「いいよ。凪桜さんは、ピノ。どうかな?」
俺が顔を覗き込むと、凪桜さんは笑ってアイスケースの中を指さした。
「真誠さんは、ガリガリ君!」
「答え合わせは、同時に食べたいアイスを指さそう。いっせーのーせ!」
俺たちはアイスケースの中を指さした。
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