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月曜日の夜(10)(side 凪桜)

「答え合わせしよう、いっせーのーせ!」 自分の好きなアイスを取る。 「え?ほんとに?」 「すごい奇跡」 僕の子どもじみた提案は僕と真誠さんの距離を一層縮めた、と思う。好きなアイスを当て合うなんて、なんで思いついたのかわからないけど。お互いの好みがわかるなんて何年も一緒にいる家族とかカップルみたいだ。 「明日の朝食も買っていく?」 と提案してみる。 「そうだね、朝の飲み物は紅茶でいいかな?」 「じゃあ、パン買っていこう」 真誠さんの部屋まですぐなのに歩きながらアイスを食べようとピノのパッケージのビニールを破いてコンビニのゴミ箱に入れた。蓋をあけると一粒ハートの形をしていた。 「ねぇ、ハートのピノが入ってるよ」 「え、当たり?」 「たまにはいってるからきっと当たり!」 僕はハートのピノをスティックで刺して真誠さんの口の前に差し出して 「口開けて」 と、言いながら目を大きくして戸惑ってるのを気にせずにちょっと開いた口に入れた。 「たしか幸せになる、みたいなピノだよ。ラッキー!」 真誠さんは急に口に入れられたからモゴモゴしながらこっちを見てる。僕も一つ口に入れて一緒に口の中でチョコとアイスの冷たい感触を楽しむ。 気がつくと真誠さんも包装を破ってガリガリ君を差し出してきた。 「俺はやっぱり定番のソーダが好きなんだ」 僕は遠慮なく角を一口かじった。 「久しぶりに食べた、懐かしいなー」 のろのろと川沿いを歩きながら食べるアイスの味が幸せでずっとこんな風だったらいいなと漠然と考えていた。何がどう幸せなんだろ? 少し頭をよぎったけど真誠さんが 「全然星が見えなくてつまんない空」 とか呟いたから 「でもネオンがきれい」 と、なんとなく答えたりしてたら、こういうことが重なってテンションが上がってるんだとちょっとわかった。 「都会って感じがして新鮮。真誠さんがここに住んでなかったら僕はこの川沿いを歩くことはなかったと思うよ」 なんとなく口に出た言葉は、実は僕の想いが結構詰まってた。

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