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相知る温度(1)(side 真誠)

くるくるしてる、なんて目の褒め方をされたのは初めてだ。 「僕は真誠さんのこと、ずっと触っていたいと思ってる」  心地のいいキスだった。  これって、もうこのままベッドへ倒れ込んでも許されるんじゃないかなぁ。全身、好きなだけ撫でてもらって構わない。何なら凪桜さんの膝の上に丸くなって、ニャアと鳴こうか。  そんなことを考えていたら、凪桜さんの唇が離れそうになった。  俺は凪桜さんの肘をそっと掴み、僅かに身体の距離を縮めて自分の唇を触れさせた。正直、舌を入れたかったけど、我慢した……つもりが実は少し唇の隙間から舌が出ていて、そこに凪桜さんの舌が触れたから驚いた。  驚いたけど、そこで動揺を露わにして凪桜さんを逃がしたり、自分が引っ込めて逃げるほどには残念ながら純情ではなくて、俺は凪桜さんの肘を掴み、凪桜さんは俺の顎を掴んだまま、顔の角度を変え、開けた口を組み合わせて、互いの舌を出会わせていた。  薄くひたひたとした凪桜さんの舌は心地よく、俺は目を閉じて舌の感覚だけに集中して、柔らかな舌の縁を辿り、滑らかな舌の裏をくすぐり、ざらつく表面を撫でて、この人は舌まで最高なんだなと思った。  不意打ちで歯茎の裏を舌先でくすぐったら、凪桜さんは小さく声を上げて肩を震わせて、その悔しさだろうか、俺に向かって体重を掛けてきた。  俺は素直に仰向けになって、押し込まれてきた凪桜さんの舌を受け止め、口の周りを二人分の唾液でベタベタにしながら、セックスみたいに呼応しあうキスを続けた。凪桜さんは女性しか経験がないと言っていたけど、セックスしてみても楽しいかも知れない。  ベッドとテーブルの隙間、テーブルの上ではトレイルランニングの実況動画、ティッシュペーパーに包んだ梅の種。  こんな場所でキスするのも、日常感があっていい。今まで自分のプライベートエリアに相手を連れ込んだことはなかったけど、こういうのもエロくていいなと思っていた。  女としか経験がないと言っていた口で、のしかかってくるなんて、本気でセックスしたいのかなぁ。  凪桜さんのことだから、なんとなく、勢いで、しようかなって思ったから、そんなふわりとした根拠なんだろう。  でも凪桜さんにとっては、多分どんな研究者が書いた論文より、分析された数字より、その場で掴み取る空気や感覚の一致のほうが確かなもので、客観的に見てもそれは確かなんだと思う。特にカンバスにのせる色を決めるときとか、確かなんだろう。  キスは気持ちよく続いていて、そろそろ後頭部も背中も痛くなってきた。どうせならベッドの上に移動したいんだけどな。どうしようかな。

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