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相知る温度(7)(side 真誠)
「僕も真誠さんの、してあげようか?」
顔を赤くして力なく身体を投げ出し、胸を上下させて乱れた呼吸を整えながら、そんな嬉しいことを言われて、俺は凪桜さんの隣に寝る。
そして少し湿った凪桜さんの髪を撫でながら思案した。
凪桜さんには言ってないけど、俺には男性の恋人がいた時期が何度かある。相手を気持ちよくしてあげたら当然のこととして自分も気持ちよくしてもらう、そんなやり方をしてきた。
でも、凪桜さんに対しては、そんな気持ちになれなかった。男との経験がない人に、ここまで相手をさせたのだし。
もし疲れているなら、寝かせてあげたい。
喉が渇いているなら水を飲ませてあげたいし、身体が熱いならまたコンビニでピノを買ってきてあげる。
それはいい人だと思われたい欲ではなくて、ただ優しくしてあげたいという不思議な気持ちだった。俺、イッてないのに賢者タイムなのかな。
「俺は大丈夫。一緒に満足しちゃった。凪桜さん、このまま寝ていいよ。水、飲む? アイス食べる?」
「水、飲みたいかも」
ペットボトルの水を飲ませ、凪桜さんをベッドに寝かせた。
「疲れたでしょう。無理しないで」
俺は凪桜さんが一眠りする間、隣に寝て飽くことなくその寝顔を見た。
まつ毛、長い。フェイスラインは細いが男性らしくくっきりしている。達したから額や頬は少しベタついていて、その光り方がいかにも事後という感じでいやらしい。
短い時間、深く眠って目を開けた凪桜さんに話し掛ける。
「先にシャワー使って」
「真誠さん、一緒に入る?」
「ダメ。そんなことしたら、我慢できなくてもう一回しちゃう」
「する?」
凪桜さんはそう言って微笑んだ。俺は小さく首を振る。
「一回だけなら夢を見たことにできるけど、二回目までしたら、念押しの確定ボタンで、誤魔化しが効かなくなるよ? 俺、明日の朝になったら礼儀正しく『昨日は気持ちよかった。ありがとう』ってキスしながら挨拶するし、もう一回ねだるけど?」
「朝から?」
「朝からするのって気持ちよくない? 休みの日に寝起きのぼんやりした頭でするの。だるくなって二度寝して、またしたくなったらする」
「ケモノの生活じゃん」
凪桜さんは髪をかきあげて呆れ顔だ。俺は関係なく勝手にその頬にキスをした。夢が覚める前に。
「シャワー、浴びてきて」
ベッドから送り出された凪桜さんは、脱ぎ捨てたスウェットを拾い上げつつ、シャワーに向かった。
「明日、何時の新幹線で帰ろうかなぁ」
そう明日には何もなかったことになる。
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