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凪の住処(6)(side 凪桜)
真誠さんと湯船に浸かった。
子どもの頃は兄弟と湯船に浸かっておもちゃで遊んだ気がする。気がするというのは記憶が曖昧だから。その頃のことは印象的なことしか覚えてなかったけど、真誠さんと背中を流しあって懐かしく思い出した。
湯船で真誠さんに寄りかかる。こんなのは初めてだからちょっと緊張する。掃除をした僕を褒めてくれて、マッサージする手が肩から手のひらまでいい刺激で進んできた。
手に気を使う彫刻家の話を聞いてから
「目を酷使する人は、このへんをマッサージするといいんだって」
と、今度は真誠さんの首の後ろをマッサージする。
ご飯を一緒に食べたりお風呂に入ったりマッサージしあったりなんて一人暮らしには無縁な事ばかりだ。一緒にいられる人がいたらこんな風に労りあったり、掃除も一緒にしたりできるのかと思っていたら、明日はきっと帰ってしまう真誠さんが言った
「毎日でも」
という言葉に笑った。
「毎日って」
この三日間のことを考えたら夢の中のように色々なことが次々と起こって、会いに行った真誠さんがなぜかうちに来てる。
「もっといてもいいよ、仕事に差し支えなければ」
「え? あ、そうなの?」
真誠さんはきっと頭の中で仕事の予定とか締切のこととか考えてるんだろう。無責任なこと言ってしまったと思ったけど、自分でなんとかするよね。
「熱くなってきたから先に上がるね」
「俺ももうでる」
ざっと体を拭いて真誠さんにタオルを渡すと先に出て腰にタオルを巻きスリッパを履いて台所に立つ。さっきの残りのレモンをガラスのピッチャーに絞って水と氷を入れた。
「熱かったらそのまま出てきてねー」
グラスも持って居間にあがってパジャマのズボンを履いた。チャビが真誠さんの座っていた座布団で前足だけ伸ばして寝ている。もう一枚座布団を出していたら真誠さんもパジャマの下だけで戻ってきた。
「あついー気持ちよかった」
「レモン水どうぞ」
「ありがとう、凪桜さんちだと色々と新鮮」
「そうかな」
「うちならペットボトルの水しか出てこない」
「うちは水道水だよ」
レモン水でなんとなく乾杯してごくごくと飲み干した。
「飲み放題だから」
「遠慮なくいただきます」
なんだかもう、ずっと一緒に居たみたいな感じがしてきた。チャビを撫でる真誠さんを見ていると本当にそんな感じがする。
「いつでも寝られるから眠くなったら言って。こっちが寝室に使ってる部屋なんだ」
襖を少し開けて見せた。
「一緒でいいよね。ダブルベッドだから昨日よりは余裕あると思うよ」
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