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凪の住処(9)(side 真誠)

「テレビかDVDでも見ながら横になる?」 なります! なります! 凪桜さんのことを後ろから抱っこして見る? 抱っこしてくれてもいい! 俺は凪桜さんの抱き枕になる! 腕枕はするのもされるのも好きだ! テレビを見てる凪桜さんのほっぺや首筋にキスを繰り返して、「もうっ、真誠さんったら……」なんて潤んだ目で怒られつつ、キスされたり抱き締められたりしたら、チャビ様ごめんもう少し押し入れにいてくれ!  一瞬のうちにフル回転したのだけれど、部屋の全貌を見せられて俺は驚き、そして凪桜さんのことが一層愛しくなってしまった。 「すごく気に入ってて前は居間に置いてたりしたんだけど、修理するまで置いておこうと思ったら置きっぱなしになっちゃって」 凪桜さんのお片付けコンプレックスはなかなか根深いらしい。そんな声を出さなくたって、誰も怒ってないよ。 「カッコイイね、この椅子」 「この赤白黒、絶対に引き離しちゃいけないと思って全部買ったんだ。なんとなくGREEN DAYのアルバムジャケットとかTシャツみたいな色でパンクっぽいと勝手に思ってるんだ」 生き生きと話す姿はやっぱり好きで、とても捨てなさいなんて言えない。むしろ好きなものに囲まれて幸せな環境じゃない?  GREEN DAYと言えば、赤い心臓を白い手で握りつぶした黒いTシャツ。あとはレザーのジャケットを着ているイメージ。凪桜さん、パンク・ロックを聴くのか。あまりイメージじゃなかったけど、俺は人生最高の一枚はMy Bloody Valentineの『LOVELESS』だと思ってるから、あまり人様のことは言えない。  俺は破れて黄色いスポンジが見えてる黒い椅子に座った。 「凪桜さんちは何人住まわせるつもり?」 と笑うと、凪桜さんは 「人間は真誠さんだけでいいけどね」 と言った。  俺だけ、なんて。クレジットカード会社から贈られてくるランクアップのインビテーション、あるいは高級マンションのチラシみたいな、特別扱いのセリフだ。将来への夢を喚起させられる。 「ねぇ」 言いたい言葉があって凪桜さんに呼び掛けたけど、凪桜さんが振り向く頃にはさすがに時期尚早、もう少し落ち着いて考えたほうがいいと思って言葉を飲み込んだ。 「なに?」 「テレビかDVDを見ようよ」 そう誘うだけで俺はちょっとヤバい。  今度は凪咲さんは押し入れを開けた。 「枕、どれにする?」 枕もコレクションしてるのか! 「ええと、この低反発で」 凪咲さんは低反発枕にアロマスプレーを吹きつけてくれて、俺はベッドに上がるといい匂いがする枕に頭を載せた。 「眠れそうかな?」 隣に滑り込んできた凪咲さんをそのまま自分の胸に抱き締めた。 「とても気持ちよく眠れそう」  凪咲さんのサイドの髪を手櫛で梳いて、少しずつ高度を下げて、髪を梳く手のひらが耳を掠めるように撫でる。  そのまま手の位置を下げて、前から後ろへ何度もゆっくり耳を撫で、さらに手の位置を下げて首を撫でた。俺の手の熱を気持ちいいと思ってくれたらいいな。  凪咲さんのパジャマの襟元から手を差し込んで、手のひらでゆっくり鎖骨を撫で、肩の丸みを撫でる。 「ボタン、外していい?」 小さく頷くのを見て、ひとつだけボタンを外して滑らかな肌を撫でる。初めは数回に一回間違えたように乳首に触れて、次第に間違いではなく意図的に胸の粒を手のひらで転がすように撫でて、目を閉じた凪咲さんの眉間に微かにしわが浮かぶのを楽しんだ。 「もっと、いい?」  俺は凪咲さんをベッドに寝かせてパジャマのボタンを全部外した。布と肌の間へそっと手のひらを滑り込ませ、片方の胸を大きく撫で回しながら、反対側の既にぷつんと勃ち上がっている乳首にキスをして口に含む。 「ん……」  鼻にかかった声が漏れて、俺はその声に自分の身体が痺れるのを感じながら、舌先で小さな粒を転がした。

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