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凪の住処(13)(side 真誠)

 いつまでも気持ちが冷めなかった。  欲が去り、かえって純粋な愛しさが浮かび上がってくる。  この人とずっとずっと一緒にいたい、迂闊にもそんなことを思った。 「凪桜さん……」 ロマンチックな言葉はたくさん胸の内に溢れていたが、どうやらねっとり重すぎるらしく口まで上ってこなかった。  でも凪桜さんは俺の髪を撫で、呼吸の合間にキスをしてくれる、その手つきやぬくもりや眼差しから気持ちは伝わってきてるから、同じように凪桜さんに触れている俺の指先からもきっと気持ちは伝わってる。  俺は凪桜さんと抱き合い、キスを繰り返しているうちに瞼が重くなってきて、凪桜さんに髪を撫でてもらいながらゆらゆらと眠りに落ちた。 「その影響で北日本から西日本は雲が広がりやすく、日本海側を中心に雨が降る予報です。沖縄・奄美は引続き晴れる見込みです」 気象予報士の明るい声で目が覚めた。居間のテレビが点いていて、凪桜さんはより近くでテレビを見るために逆さまになり、布団の反対側から頭を出して枕を抱えている。  凪桜さんのベッドはヘッドボードがついていないので、どちらを上と決めても構わないのだろうけど、日時計のように上下が変化するのは面白い。  俺も枕を抱えて布団の中で半回転し、凪桜さんの隣に顔を出した。 「おはよう、凪桜さん」  毎朝の習慣を装って頬にキスをしたら、 「おはよう、真誠さん。よく眠れた?」 凪桜さんも同じように当たり前を装って頬にキスをしてくれた。 「ぐっすり寝た」 さらに互いの唇を触れさせる。これが本当に毎朝の習慣になったらいいのに。   居間の向こうの廊下をチャビ様が歩いていく。 「チャビ様、おはよう」 「にゃー」  返事をしてくれたものの、何か用事があるらしくて、そのまま玄関のほうへと歩いて行ってしまった。  先週までは猛暑の影響で体温より高い気温が続いていたのに、今週は過ごしやすい。  ほどよく涼しい秋の空気の中で隣から漂ってくる凪桜さんの体温が心地よかった。  凪桜さんは頬杖をついて上体が浮いていて、チラチラと見え隠れしている乳首に目を留める。  油断して緩んでる乳首を指で触って勃起させたいなぁ、めちゃくちゃに舐めまわして声を出させたいなぁ、それで凪桜さんのペニスまで勃起したら、口いっぱいに頬張りたい。 「……ダメ人間になりそう」 俺は目を閉じて視覚情報を遮断し、凪桜さんに抱きつくだけで我慢することにした。ごめん、ちょっとあたってるかも知れないけど、朝だからね。ただの生理現象だよ。 「凪桜さんの体温、気持ちいい」 「そう?」  それにしても。  この人、なんでこんなに魅力的なんだろうなぁ。

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