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凪の住処(15)(side 真誠)*

 ベッドを出たはいいが、全然治まらずに上向いている。下腹部にはもやもやと欲求があり、凪桜さんと爽やかな朝を過ごすには鬱陶しい。 「凪桜さん、先にシャワー浴びてて」  一緒に入るのが前提の言い方をして、俺はトイレに入った。引き戸を開けるとまず男性小用のアサガオがあって、もう一枚戸を開けると和式便器がある。こういう造りも昔ながらだと思う。個室に入ってとりあえず排泄してみたが欲求は治まらなくて、仕方なくトイレットペーパーを片手に自分の身体を慰めることにした。  全裸にサンダルだけを履いた姿で壁に寄りかかり、思い出すのは昨夜の事ばかり。凪桜さんの興奮した顔や腰つき、キスや愛撫。気持ちのいい記憶しかない。どのシーンを切り取っても掻き立てられる。  肉茎を摘むように指の腹をあてて手首のスナップを効かせる。求めていた刺激であっという間に高まって、凪桜さんが欲望のままに腰を振って達する姿を思い浮かべながら吐精した。トイレットペーパーを流してトイレを出て、磨りガラスの向こうから何か楽しそうな鼻歌が聴こえてくる。  軽くノックしてから引き戸を開けると、凪桜さんは髪を泡だらけにしていた。  引き締まった後ろ姿、片足重心の曲線美、両手を挙げた無防備な姿。  俺は一歩踏み出すと、泡だらけの髪に自分の両手を突っ込んだ。地肌をマッサージするように洗うと、凪桜さんは目を閉じた。 「気持ちいい。寝ちゃいそう」  凪桜さんは小さくあくびした。 「凪桜さん、そういえば昨日は眠れた?」 「んー、ちょっとだけ。なんか気持ちが高ぶっちゃって、眠気が来なかった」  凪桜さんの話に頷きつつ、髪の生え際に手を立てて防波堤を作ってシャワーの湯を髪に含ませ、しっかり洗い流して、今度は手のひらにボディーソープを受けて泡立てた。 「刺激が強すぎたかな。男とするなんて、気分悪かったんじゃない?」 そのことは、本当に心配だった。男が男を見て性欲を感じる確率は単純に低いし、その場は勢いで何とかなったとしても、夜が明けて、この先も継続して関係を持とうと思えるかは別の話だ。  友人として、あるいは恋人同士でも、プラトニックでと凪桜さんが言い出す覚悟はしている。  でも凪桜さんははっきり否定した。 「そんなことない! 世界中で一番興奮して気持ちよくなってる気がするくらい。興奮し過ぎちゃって、自分を持て余したっていうか……その」 「その?」 問い掛けながら、凪桜さんの耳の後ろからうなじ、首、肩、背中を洗う。 「その……もっとしたかったなって思ったくらい。それで寝られなくて」 「本当に? それなら、おねだりしてくれればいいのに! 命令でもいいよ。俺、してるときに凪桜さんに強気な目で見下ろされたり、いじめられるとゾクゾクするから」  背後に身体を密着させながら、凪桜さんの身体の全面を洗う。胸の上に手のひらを滑らせるとすぐにぷつんと硬くなって、凪桜さんは身体を震わせた。 「気持ちよかった? もっとしようか?」 「うん。して」 俺は指の腹で凪桜さんの胸の粒をころころと弄びつつ、下腹部の茂みを洗い、さらに引き締まったお尻を撫でまわしてみた。 「あっ」 「お尻は嫌だった? 興味ある?」 「ある。真誠さん、気持ちよさそうだったし」 「うん。慣れると違う気持ちよさがあるよ。いきなり入れたりしないから心配しないで。そっと触れるだけ」 ボディーソープを洗い流してから、そっと指を谷間に埋め、硬い蕾に指の腹を触れさせる。 「嫌悪感があったら、すぐに言って。ボディーソープは滲みてない?」 凪桜さんは濡れた髪を揺らして返事をしたが、目を閉じて黙っていた。 「焦らないで。俺の指が触れるのに慣れるところから。でももうひくひくしてる。ここが気持ちいい場所だって覚えようか」  俺は後孔を指の腹で撫でながら、頭をもたげている芯を手に包んで上下に擦った。  あまり滑りがよくないから、引き攣れて不快感を与えてしまいそうだ。 「段取り悪くてごめん、ローション取ってくる。寒くないように、リラックスしてて」 俺は全裸のまま寝室へ引き返し、床に落ちていたチューブを掴んで風呂場へ戻った。

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