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今年も猫年(11)(side 凪桜)
真誠さん、ユーミンのなんとかって曲に例えて僕を励ましてくれてるのかな。よく分からないけど。
冷めた紅茶で味見した金団の後味を押し流してから使った鍋や道具を片付けた。
真誠さんは、嫌なことは食べちゃえと言って
「今年は戌年で、来年は亥年だけど、ウチは毎年猫年ってことでいいよね?」
「にゃあ!」
とチャビと話をしてる。チャビも調子よくいいタイミングで鳴くからまるで人間の話を理解しているみたいだ。いや、きっとわかってると思う。
「チャビはね、去年の秋にうちに来たんだ」
「そうなのか! チャビ様は何才なの?」
そういえぱ真誠さんにはチャビの話をしてなかった。
「チャビの前にグレーの縞とまだら模様の猫を飼っていたんだ、その子は拾ったんだけどね。その子が亡くなった次の日に庭に現れたのがチャビなんだ」
「へぇー、じゃあチャビ様は、その子の生まれ変わり?」
「ううん、チャビはもう半年近く経ってそうな子猫だった」
僕はチャビが小さい頃の写真を見せて、ついでに前にいた猫の写真も見せた。
「もしかしたら前の猫が、僕が寂しがるといけないから遣わせてくれたのかなとか都合のいいことを思ってる。
僕は前の猫のこと、もう年も年だし苦しむより早く楽になればいいと思ってたし、命はいつか終わるとしか思ってないから死んでもそこまで悲しくなかった。でも悲しいのは居なくなったことを何回も思い出すことなんだ。
だからたまにしか思い出さないように、チャビを連れてきたんじゃないかと思ってる」
真誠さんは僕の話を聞きながら猫の写真と僕の顔を代わる代わる見ていた。
「そういう訳でチャビの年齢は推定一歳半。人間で言うと20から23歳くらいかな」
「ええーチャビ様、意外と大人なんだね! スマートで小柄だからまだ子猫かと思った」
居間の暖房の前で横になっているチャビを見ながらテーブルの上を拭いた。
「前にいた猫は気位の高い女の子でね。悲しんでたりしたらきっと、馬鹿なヤツめとか思われるんだよ。そんなの悔しいからさー」
まるで猫と話をしていたみたいなことを言う僕に真誠さんは
「いいなぁ、俺もチャビ様の思ってることがわかるようになるのかなー」
なんて言ってる。きっといつの間にかわかるようになると思うよ。今だって十分会話してるみたいだし。
「こんにちはー」
「あ、米屋さんだ」
「よいしょ、ここに置いてくな」
米屋さんは近所の農家の人だ。精米したお米と半升分ののし餅を持ってきてくれた。
「お餅は手伝いのお礼、また頼むわ」
と、忙しそうに去っていった。いつもお米にオマケの野菜とかお土産のお裾分けがついてくる。年末は少しだけお餅を分けてくれる。たぶんこれは僕の家だけなんだけど。
「お餅貰えるんだ、すごい」
真誠さんは都会にはないサービスに驚いているから僕は言った。
「稲刈りのお手伝いしたからね」
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