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今年も猫年(20)(side 真誠)

 そんなに笑わなくてもいいじゃん、というくらい凪桜さんは笑った。  こたつの上のエントリーシートには、蛍光ペンまで追加されている。この人、そんなに駅伝が好きなのか。これはたぶん本気なやつ。下手にちょっかい出してはいけないやつだ。妹1号2号にとってのBLと同じくらい好きなやつ。覗き込んだ瞬間に顔面に裏拳が飛んでくるやつ。それなのに読まされて感想文を書かされるやつ。  ああ、松の内は仕事しない代わりに駅伝の感想文か。結局、俺、休めねー。でも凪桜さんに見下ろされて股間を踏まれながら書けって言われたら喜んで書いちゃう。ああん、踏まれてるクセに硬くしてごめんなさい、もっとなじって!  こたつの天板に顎を乗せ、走馬灯のような速さでSMショーを繰り広げていたら、脳内で鼻フックされたタイミングで足が絡んできた。凪桜さんったら大胆っ! 素敵っ!  その足の動きは間違いではない証拠に膝から内股を辿って、本当に股間を足の裏で! はい、駅伝感想文書きます!  こたつから抜け出して、風呂場の窓に忘れてきた銀色のビニール袋を取りに行き、凪桜さんの腰を両膝で挟むようにして座った。  凪桜さんは黙ってこたつに向かって俯いてるけど、たぶんこたつの熱さだけが理由じゃなく耳と首筋を赤くしてる。  いいよね、この雰囲気が本格的になってからゴムとローション取りに行く俺の間の悪さ。のこのこ戻ってくる間抜けなツラ。身の置き所がなくて困るよね。だからホストとして売れないんだろうなぁ。  俺は背後から凪桜さんを抱き締め、肩に頬を押し付けて目を閉じた。この綿入れ半纏に似合わない高貴な香りだけでもイケる。もったいないから耐えるけど。  凪桜さんの表情は見えない。でもカットソーの裾から手を入れて直接肌に触れても裏拳は飛んでこなかった。「お前、ちゃんとメシ食ってんのか? ばーか、少しくらい太ったほうがいいんだよ、もっと食え」と言いたくなる身体に手を這わせる。今までにどれだけのBL感想文を書かされてきたか。  乳首どこだ、乳首。  イラストや漫画だとどこまで描くか悩ましいらしいが、俺にはくっきりした勃起乳首をください。そして凪桜さんにはちゃんとある、んだけど。どこ? どこだ?  思ったよりちょっとだけ外側にあって、何度か手のひらをさまよわせるうちにぷつんと硬くなったのを手探りで見つけた。 「んっ」 ひくっと震える身体が愛しい。最近は舌だけじゃなく、指でも感じてくれるようになってさらに嬉しい。開発は進んでる。  俺は凪桜さんの胸の粒を指の腹で撫でながら、自分のほうが熱くなって我慢できないものを凪桜さんの腰に押しつけた。 「今日は、俺が入っていい? すごく入りたい気分」 熱いうなじにキスを繰り返しつつ、ちょっと腰を振ってこの先を予感させつつ、おねだりの言葉を口にした。言っておくけど、俺たちは最近、二ヶ月半に及ぶ説明会の開催から質疑応答、入念な準備と充分に配慮した掘削という開発事業が功を奏してリバになった。地雷のやつはそっ閉じで逃げろ。

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