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庭に咲く花、枯れる花(2)(side 凪桜)
「東京マラソンって出るのにも抽選で、なかなか当たらない大会なんだよね。去年は新記録出して一億円貰った人もいる……」
真誠さんも話題になったことは知ってるようだ。
去年までは二月開催だったが今年はなんの都合か三月三日。オリンピックを来年に控えてとても重要な大会だ。東京マラソンは「ワールドマラソンメジャーズ」という世界六大マラソンのひとつ。各大会でのポイントでランクが決まり優勝すれば高額な賞金も出る。
あ、また関係ない所で話が長くなるから省略。とにかく今度のオリンピックは東京だからそれもあって大切な大会なんだ。
「同人誌即売会ってちょっと興味があったんだ。東京マラソン見ながら僕も行こうかな」
「は?」
「さっき内容までは聞こえなかったけど電話で盛り上がってたよね、お手伝いの話でしょ。なんか楽しそう……」
「いや、楽しくない! 俺は無理矢理手伝わされる、力仕事に雑用そしてきっと恥ずかしいことをさせられて晒し者にされる。そんなとこに凪桜さんを連れて行けないよ!」
真誠さんはまた何か大袈裟に妄想してる。晒し者って。
「よく聞くコミなんとかっていう即売会だと色んな人が居て楽しそうだよ」
「違うんだよ〜。あいつらが出るのはBL中心の腐女子が集まるイベントなんだって! そんな所に凪桜さんを連れていくなんて凪桜さんまで晒し者にされる」
「腐男子とかいう人がいるって聞いた」
「俺も凪桜さんも腐男子じゃないでしょ」
「いいよ、僕は東京マラソン見に行くから。一緒に行こうよ」
僕は早速新幹線の予約をしようとスマホをタッチして
「何時に出る? イベントは何時から? 実家にも寄るよね?」
と、画面を見ながら聞いたのに返事がない。顔を上げて真誠さんを見ると
「凪桜さんを連れていくと妹たちが無駄に喜ぶから嫌なんだよ」
と、訳のわからないことを言ってる。
「別行動したいならいいよ、別でも。僕はマラソン見にいくから」
「そんなー! せっかく行くのに別行動なんて……」
「いいよ、気にしなくても。マラソンは9時10分スタートだから僕は早めに出る」
「凪桜さん? そんな一人で決めないで、俺も一緒に連れて行って!」
真誠さんはちょっと芝居がかって僕の腕を掴んでる。そこにチャビがやって来て僕の方に伸びた真誠さんの腰の上に乗っかった。
「チャビ様も行きたいって言ってる! どうかお供させて下さい」
「桃太郎なの? 吉備団子ごときに釣られるチャビと真誠さん。どうしようかなぁ」
真誠さんは僕の腕を両手で揺すりながら「何卒、何卒……」と、僕にすがりつく真似をしている。
そもそも用事があるのは真誠さんじゃなかったのかな。
「真誠さんは都内に住んでたんだからマラソンくらい見たことあるでしょう。僕は東京マラソンはまだ見たことないから雰囲気を感じてみたい。最初から最後まで見るわけじゃないから。わかってると思うけど」
「よくわかってないです」
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