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庭に咲く花、枯れる花(8)(side 凪桜)
真誠さんは何だかんだ言いながら、BLや腐女子の世界に詳しい。
僕もあれからいろいろ調べてみたんだ、イベントにはどんな人が参加するのかとかマナーみたいなこと。販売じゃなくて頒布って言うとか、差し入れをするというコミュニケーションがあるとか。とりあえず差し入れは真誠さんに聞いてお菓子を準備した。
あと、真誠さんが呪文を唱えてるようにしか聞こえなかった沢山のジャンルがあるということも。まだ僕にはわからないことだらけだからその都度真誠さんに聞けばいいか!
ショッピングモールみたいなところを抜けて会場に着くと真誠さんのあとに付いて入場した。キョロキョロしながらついて歩き、真誠さんが予約したという本を受け取る間に後ろのサークルのマンガを立ち読みする。宝石の擬人化だって。何となく惹かれてつい購入してしまった。そして真誠さんにならい代金とお菓子を詰めた差し入れを渡すと、めちゃくちゃ感謝されてなんだか僕もここの雰囲気に馴染んだ気がするぞ!!
「ねぇ、これ買ったよ!」
真誠さんにパラパラと中身を見せると
「え? そう、中身見たの?」
と、笑いながら覗き込んできた。
「さらっと見本を見たら読みたくなったんだ、マンガは絵の好みで衝動買いしちゃうね」
「凪桜さん、きっとそれ絶対BLだけど大丈夫?」
「なんで? 大丈夫だよ。差し入れもしてみた! 知らない人だけど、初めて春庭で本を買った記念。なんか楽しくなるね」
そういいながらカバンのファイルの間に本をしまった。
それからまた真誠さんに付いて歩きイチコちゃんとニコちゃんのいる別の階のホールに入った。
「二列の机の両端にあるのが誕生日席。今回、どういう訳かそういう席を割り振られたらしい。一体何冊本を作ったんだか」
「お兄!」
イチコちゃんとニコちゃんの声がして、見ると二人は黒いうさぎの耳を付けていた。
「こんにちはーおつかれさま! 耳かわいいね」
と声をかけると
「おまえら何考えてるんだよ」
という真誠さんに赤い耳がニコちゃんの手で付けられた。
「おいっ……やめろよ」
「売り子する約束だからね、耳付けて貰わないと」
そしてボソッと「うさぎのマコトは重要」とかなんとか言っているのが聞こえて僕はそっちの方が気になったけど
「真誠さん似合ってるよ」
とイチコちゃんとニコちゃんにペットボトルのお茶を差し出しながら真誠さんと目を合わせた。むっとしながら口元をむにゅむにゅさせて顔を赤らめた。かわいいウサギだ!
そしてまたニコちゃんがまた何か呪文を唱えてるけど聞き取れなかった! 初心者にニコちゃんの言葉は難しい〜。
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