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下心ありまくりだ。
長年ニートを続けてきた俺にとって
仕事を始める理由なんて単純なものでいい。
しかし、単純ながらも長年持ち上げてこなかった重たすぎる腰を上げてくれるパワーを秘めたもの───羽空美晴も所属するという事務所のマネージャーの仕事、それは正人を簡単にやる気にさせた。
「いやぁ、すげぇ有り難いわ。こっち今めちゃくちゃ人手が足りてなくてさ、長年付き合いのある高塚なら信用できるし」
長年付き合いがあるといっても、同じく長年ニートを続けてきた正人だ。どこに信用なんてあるのか、と苦笑しつつも大学の入学式用に買った今では着ているのが少し辛いスーツに袖を通し、向かった先は前田が勤めているアーティスト事務所だ。
*
そして二時間後、入ったときと同じ苦笑しながら高塚は会社を出てきた。
簡単な質問や、基礎事項を記入し、とんとん拍子で給与のことや出勤日のことを話された。
どうやら採用、不採用の話はないようで、今からでも働いて欲しい!とでも言うようだった。
いやいや、ニートにこんな簡単に仕事を任せちゃダメでしょ、とも思うが本当にそれどころではないらしい。
前田曰く、今一大プロジェクトがー…とのことで。
言われるがまま頷き、やっと解放された。
担当するアーティストは、後日連絡します、と言われ取りあえず勤務先が見つかったことに胸をなで下ろした。
しかも美晴たんの所属先事務所だ。
あわよくば…美晴たんのマネージャーに、なんて下心ありまくりだ。
今日は早く帰って就職祝いに酒でも飲もうと
その日の正人の足取りはバカみたいに分かり易く軽かった。
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