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第29話
それをイザヤに伝えるため谷に降りた。
聞いた彼はただ黙って頷いた
「ミカ。ありがとう。」
「だから…始めからあの女に仕組まれたこと…」
「うん…何か…うん…バカみたいに信じてた俺が…情けない…今なら全てを理解できるのにね。あの頃は生きることに必死だった…」
そういうイザヤの憂いを帯びた表情に目を奪われた
いや…出会ったその日にはもう彼の美しい姿に囚われてたんだ…
「ねぇ。イザヤ。俺はね…」
「うん。それ以上はダメだよ…ミカ」
勢いに任せて想いを告げようとした唇をイザヤは指先で封じた
「気付いてたの?俺の気持ち」
「俺は咎人…お前とは住む世界が違う。お前にはあの方もいるでしょ?」
「でも…あのお方は…」
「ミカ…お前は優れた天使。そんなお前には俺は似合わない。わかるだろ?」
「でも…俺は…」
「ごめんね」
「…」
それ以上は何も言えなくて諦めた想い…
それ以来そういう相手もいない。あの方はまた特別な存在だからそういう関係にはなり得ない
………
「ふーん。秤みたいな美人を振っちゃえるほどのやつかぁ。見てみたい」
「イザヤは人界が好きだから半年に一度くらいはきますよ。ただ力を封じられてるので来れないこともありますけど。機会があればですね」
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