29 / 39

第29話

それをイザヤに伝えるため谷に降りた。 聞いた彼はただ黙って頷いた 「ミカ。ありがとう。」 「だから…始めからあの女に仕組まれたこと…」 「うん…何か…うん…バカみたいに信じてた俺が…情けない…今なら全てを理解できるのにね。あの頃は生きることに必死だった…」 そういうイザヤの憂いを帯びた表情に目を奪われた いや…出会ったその日にはもう彼の美しい姿に囚われてたんだ… 「ねぇ。イザヤ。俺はね…」 「うん。それ以上はダメだよ…ミカ」 勢いに任せて想いを告げようとした唇をイザヤは指先で封じた 「気付いてたの?俺の気持ち」 「俺は咎人…お前とは住む世界が違う。お前にはあの方もいるでしょ?」 「でも…あのお方は…」 「ミカ…お前は優れた天使。そんなお前には俺は似合わない。わかるだろ?」 「でも…俺は…」 「ごめんね」 「…」 それ以上は何も言えなくて諦めた想い… それ以来そういう相手もいない。あの方はまた特別な存在だからそういう関係にはなり得ない ……… 「ふーん。秤みたいな美人を振っちゃえるほどのやつかぁ。見てみたい」 「イザヤは人界が好きだから半年に一度くらいはきますよ。ただ力を封じられてるので来れないこともありますけど。機会があればですね」

ともだちにシェアしよう!