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第33話

「立派なところだね」 「かつて暮らしていた老夫婦は花が好きでこれだけ立派な庭園を作り上げました。老夫婦には子はなく身内ももう誰もおりませんのでここは手付かずでした」 「おかえり。ミカ」 「イザヤ。ここにいたのか?」 「あぁ。相変わらず美しい庭だな」 望さまが息を飲むのがわかった。 「望さま。私の友人。イザヤです」 「…」 「ミカがお世話になっています」 お手本のようなお辞儀をしたイザヤ。元より持っていた知性が溢れ色香まで漂わせているイザヤにただ見惚れるばかりの望さまに、胸の中にもやっと何かが広がる 「綺麗…」 「ありがとう。望。君は本当に人か?」 「え?」 「その姿…人とは思えぬほど美しいな。まるで天使のようだ。そう思わないか?ミカ」 「えぇ。望さまは美しいですよ。天使なんかよりずっとずっと…」 「そうだな」 「貴殿方に言われても…説得力ないですね」 「ははっ。そうか。まぁ。そうかもしれないな。ミカは天使の中でも特に美しいからな。その上頭脳も力もある。これだけ美しいのに誰にも手込めにされなかったからな。狙っているものは多くいたけれど」 「やはり特別な存在なんですね。秤…ミカさまは」 それから暫く談笑し気付けば空には月が輝いていた 「私はもう戻らなければ…望。今日は会えてよかった。楽しかったよ。これからもミカとアミーを頼む…それと…」 望さまの耳元で何か囁くイザヤ。 「イザヤ様。それは…」 「いや。望は近い内にそうなるよ。俺は少しだけ先の未来が見えるから。自分に正直になって。では」 月明かりに照らされたイザヤは少しずつ姿が霞んでいき消えた

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