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Episode III

まずは街へと行って、現実世界へ持っていける通貨なのかを確認しようと、家を出る前に初心者装備を纏い等身の鏡の前で格好のチエックをする。レベルはパーティを組まなければ知られないので、ソロばかりのオレにはそもそもに無縁。 長い間この場所にいる為、いなくなった人の装備や武器を貰ったりしてここまで財を成したのだ。 「辞めれるってだけで羨ましいよ...マジで」 そう呟いてストレージからバインダーと呼ばれる魔法石を出した。書かれた地名をタップするとワープポイントへと飛べるのだ。 瞬時に視界が変り、目の前には大量の人と、NPC(ノンプレイヤーキャラクター)ゲームの進行などをスムーズに行うための、動かないキャラクターが入り乱れていた。 「今日はイベント?」 普通のゲームとして、中学の頃は楽しんでいた...レベル上げもしたし、仲間と狩りにも出かけたが、人は眠るのだ。 オレみたいに強制連行されてきた人でなければ、絶対にいない深夜から早朝に掛けては中学生を相手にする人もほとんどいないという訳だ。 そしてそのうち1人になる。 寂しくて泣いた事もあるが、たまに付き合って遊んでくれる人もいた。 ただ、口を揃えて...〝学校行けよ〟と。 普通であれば寝る時間だ、その時間に起きてたら間違いなく学校は休んでいると思われていただろうし、ヒキコモリと直接言われたこともある。 違うんだけどね。 それはさておき、何やらイベント前なのか人が多く居る中をオレはキョロキョロと辺りを見回した。 ギルドと呼ばれる場所に久しぶりに顔を出した。ドアなどはなく中に足を踏み入れると場面が一気に変わる。 普段ならありえないのだがこの場所は特別な世界なのだ。 「お?新入りかー」 と、モヒカン頭の男がオレの方を抱き寄せてきて驚いたけど、そもそもにこの場所はギルド...人との交流を図る場所でもある。 「新入りでは無いんで」 「なんなら狩り連れてくぜ?」 姿はソルジャーなので、実際のオレよりは逞しくキリッとしているが、どうにも性格なんだろうな。こうしてよく絡まれる...。 「いえ、マスターと話しがあるんで」 「馬鹿だな、初心者とは話してくれないぜ?」 この格好で来たのが不味かったなと、苦笑いを零したら、二階建ての階段と続きになった手すりから金髪なボインお姉さんが叫んだ。 「あーっ!!吉田!」 本名なだけに...大声で呼ばれたくなかった。 「カレンさん、マスターは?」 「んーあと1時間でログインしてくるはずー何?用事あるなら私と遊んでよー」 彼女は手すりから飛び下りてオレの前に一直線に走って来た。盗賊のスキルがあるから、やたら身軽なんだよねこの人...。 「麦茶でも引っ掛けながら最近の様子報告しなさいよ」 「あーはい...」 結局オレの報告よりも、彼女の狩場の話で時間が潰れてしまった。その後マスターが来たので、優先的に通してもらい人払いをしてもらう。 「数ヶ月いなくなってたから、もう来ないと思ってた」 ドラキュラの様な漆黒のマントを翻し、オレの前の席に座る。エルフのマスター。 尖った耳と、髪を後ろで束ねてる姿に先程見た人と重なった。 「うん、来てたけど動物の餌やりしたりしてた」 「それにしても...もっと顔を出せばいいのに」 「あぁ...それと、人員サンキューなお陰で馬達もちゃんと生きていける」 オレが来ない時間はここのマスターの伝で、馬の世話などのミッションを発動させてもらっている。 ゴブリンなどの低級モンスターはどこで湧くかもわからないため動物だけにしてしまうと獲物にされてしまう恐れがあるからだ。 そして、このマスターは2年前にゲームを始めたらしいが、その時に助けたのがきっかけで知り合い、オレのことを少し話してあった。 このゲームは、ゲームの事を話すのをNGワードとしていて、どんな環境でやっているのか、メーカーはどこなのか...それは絶対に他言無用なのだ。 だから、ワードに引っかからないように上手く話を組み替えて話す。

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