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Episode IV

少し話を終えると、ふとワープポータル近くが賑わっていたのを思い出した。 「今日はなんかイベント?」 「あー氷河に出立するヤツらの見送りだよ」 そういえばさっき見た情報だな...と思い返して頷いた。 「あぁ、そうだ!リアル通貨...持ち出し...なキーワードでなんか情報ない?」 「あードラゴン討伐で落ちるmonが、リアルで届くってのならあるな」 その言葉に驚いてオレは立ち上がった。 さすがにオレの行動に驚いたマスターもどうしたと不安そうだった。 「あっ、ごめん...マジか...てか、それはワードにならないんだ?」 慌ててオレは座り直してコホンと1つ咳払いをした。 「うん、リアルはワードで禁止されてるから言えないけどそれだけは、何故か大丈夫なんだよな...」 まさにその通りで、今回も会話にノイズが入るかと思いきや、しっかりと対話出来ていることに驚きを隠せずにいた。 「その通貨は何に変えられるんだ?」 出来るだけ情報は引き出さなければと食いつく。 「ここの装備...最高ランクの鎧か素材らしいな...あとシークレットの武器?」 「だったら、リアルな必要なくね?」 「実際貰ったのは俺の知る中では1人しか居ないんだよ、その人もあまり鎧なんかに興味ないらしくリアルで落としたとだけ言ってたな」 それだ!その可能性があるって事だ! そして落としたとは、益々オレの探し求めてる情報だ! 「そ、その人誰かわかる?」 オレは思わず身を乗り出して聞いた。 「え?落とした奴?」 「そう!」 少し困ったような顔をしたかと思うとへへへと笑って頭を掻きながら答えてきた。 「...えっと、俺」 自分を指さしてとんでもない事言いやがった! 「は!?」 それしか出ないよな?だってマスターは、ギルド管理が主でほとんど狩りになど行かないし、新人育成に行くのは解るが...ドラゴンを相手にするなら... 「あっ!ギルドで狩り行ったのか?」 たまにお祭り騒ぎで、何日にドラゴン討伐行くぞー的なイベントを開催していて、もしやそれではと聞いてみた。 「うん、うっかりドラゴン討伐しちまって、落とした...」 ええええ!?待て待て!オレの必死を返して! まさか、ここで出会うとは...そして、オレの弟子みたいなコイツが、学校にいるってことか!? あまりの身近さにオレ呆然とするしかなかった。 「あれ?吉田さん?」 「あ、ごめん、今自分との戦いを始めたからそっとしといて」 さてどうしたものか...それより何より、コイツが...オレを見て幻滅するかもしれない...それが怖かった。 だからそれ以上の話は止めて、何事も無かったように、あの話の続きをした。 「monは落としたままでいいのか?」 「あー誰かにやりたくても現実とリンク出来ないし、良いですよ。そこまで拘ってないし」 「売ったら、かなり高価になるんじゃね?」 「俺金持ちだし」 殴ってやりたかったが、まぁいいや... 「そうか、貴重な情報サンキュー」 とりあえず家で飼ってるヤギの“めぇめぇ”ちゃんの乳を入れた瓶を2つ置いてやった。 「おお!ありがとうございます!ヤギのミルクは最近どこも不作で...流行病に気を付けてくださいね」 「うん、わかってる...んじゃオレはそろそろ戻るな!情報サンキュー」 この場所では定期的に、ある種の動物が病にかかる。それで消滅するとしばらくは同種を飼育できないのだ。 動物は全て卵でそれを羽化させる為に卵ホルダーを持ち歩いている。 オレも今、ラクダを抱えてるがなかなか羽化しないんだよなー。 それはさておき、オレはリアルで絶対に探し出してmonを返さなければならない。 それ程に希少価値のある金貨だから。 そう考えつつ自宅へ戻ると、健康そうな馬とヤギに餌を与えて家の中へと戻った。 定期的に病に掛かるのは、買って食べさせる餌のせいだとオレは思ってる。馬の時もそうだった...面倒で販売されている餌を買って与えるのだ。 オレみたいに時間を持て余さない限りは、狩り優先になるよなー...なんて思いつつ、そろそろ朝が来るはずだからとソファーに横たわった。

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