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Episode Ⅴ
目を覚ませば、前髪がもっさりと邪魔をしていて、邪魔だと動物のように頭を振った。
起き抜けでシャワーに入り身を清めてから、朝飯を食べる為にリビングへ降りた。
「おはよう」
「うん、おはよ」
母さんの声に返事をして椅子に座るとスクランブルエッグがでてきた。
パンの上に乗せてケチャップをかけて折りたたんで食べる。
「醤油の方が美味しいのに」
「ん、今度そうする」
反論するとうるさいから、そう答えてさっさと食べ終えると部屋に戻り制服に着替える。
「よし!今日こそ聞き込みだ!」
と...張り切るが、果たして内気なオレに話しかけることが出来るのか。
登校して授業受けて、昼休みに怪しい動きで屋上と、中庭を見て回る。
中庭にはイチャイチャ男子カップルが数組いるんだが...なんであんなイチャイチャ出来るのか。羨ましい...はっ!本音が漏れた。
いや、それはどうでもいい!今は探さなければ!ギルマスのアイツを。
中庭ではカップルの他は、特に目につかず屋上へ上がった。数組の団体が数箇所に散らばって陣取っていて、多分先輩なんだろうな...と見回したらこんなオレと目が合った人がいた。
ただ、ジッとオレを見てて...なんか背中がこそばゆい。けれど話しかけるチャンスと足を進めてその人の前に立った。
顔立ちはとても綺麗で...その友達も楽しそうにしてたのにオレの出現で変な子見る目になってた。
「あっ、あの!」
牛乳飲んでるあたり、身長に伸び悩んでるのかな?なんて思いながら、ポケットのコインを握り締めた。
「なに?」
不思議そうに首を傾げる...は!?な、なんか...俗に言うキスマがっ!か、隠さないのか?めっちゃ見えるけど...
「用事...あるんだよね?」
オレの心のツッコミは、本人には伝わらず、それでも気味悪がらず話しかけてくれるいい人だ!そう思って手をその人の前に出した。
「おと、し、物なんだけど、知ってます?」
オレの汗ばんだ手の上を、その人がジッと見てた。
「なになに?ゴムでも落としたか?」
横にいた2人もふざけて覗き込んで、コインを見るなり首を傾げた。
「なにそれ?」
良く通る声が、オレに問い掛けてきた。
キスマ沢山付けてるこの人の、アノ時ってどんな声なんだろ?なんて、邪念が支配しそうで頭を振った。
「あの、これの落とし主探してて...」
覗き込んでくる人達にちゃんと見えるように一人一人の前にゆっくり移動してみた。
「アンジ知ってんの?」
「しらねー」
「俺らではないよなー」
と...3人で会話が始まったので、オレは頭を下げて逃げるようにその場を去った。
マジ綺麗な人だったなと、心臓バカバカ音鳴らしてるから深呼吸して一日を終えた...
なんで見つからないんだよ。
結局...無駄骨でオレはしょんぼりと夢の世界へ引き込まれた。本当にオレはいつ寝てるんだよ。
自分に突っ込んでも誰も答えてくれないけど。
さて何をしようかと思ったが、動物の餌は当面用意してあるし、薪でも割ろうと外に出た。
ぴろん...
なにかイベントが始まった音だが、気にしない。何をしてもいつもクリアになるんだ。よくわからないこのシステムも、本当は抜け出したい...
ゲームヲタクとやらなら喜ぶのだろうけどこんな年数やってたら嫌でもチートもどきになってしまう。だって、同じ年数やってる人はほとんど居ない...飽きたらやめれるのだ。
オレ以外は...。
薪割りを終わらせて中に入ろうとドアに手をかけた。
『吉田クリア、天然石を手に入れた』
天然石とは、この世界で言う素材。
どんなのが来たかと部屋に入りストレージを開いた。
「うお!?ダイヤ」
天然石は様々な種類があるが、ダイヤはかなり確率が低く滅多に出会えない物だ。
久し振りに来たが売値もかなり破格だから、久しぶりにフリマへと足を運んだ。
装備は昔使ってた中途半端なマントとボロキレのシーフの装備。街を歩くと変に絡まれるので汚い格好が良いのだ。
「吉田さん」
あれ、人に見つかるわけないと思ってたのに、あっさり名前呼ばれた...
誰だと見たら、エルフの...「マスターか」
「サブって名前があるんだから、名前で呼んでくださいよ」
「さぶいぼブツブツ」
「ん、可愛いから許します」
いや...まてまて、何も許しを乞う事なんてしてないけどな。
「で、何してんすか?」
サブが聞くからこっそりコンタクトという、周りに聞こえないシークレット会話をする。
“ダイヤ出た”
“ええっ!?何回目ですか!”
“んー?まぁ売りに来たんだが”
“俺買います!金持ちなんで!希望価格は?”
“全財産”
“鬼っ!悪魔!変態っ!”
“の、3分の1”
“了解”
散々言ってたのに了解しやがった...
てかオレの目の前で丸が増えていくんだが...こいつ一体いくら溜め込んでんだよ!
“うわ、そんな要らんから!”
“あと三つ丸つけれますよ!”
“つけたら売らない”
という事で、数年は金に困らない額を頂いた...億単位かよ!!
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