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EpisodeⅩⅨ

サブのギルドの事と知り、思わずオレはその噂話に混ざろうと立ち上がった。 胸ぐら捕まえて問い質すつもりだったが...待て、オレはそもそもにギルドメンバーでは無い。 立ち上がって浮いてた尻を椅子に戻し深呼吸してから、耳をまたすませる。 聞いた情報を流すしかオレには出来ない。 「ナナフシのメンバーが、今夜集会を襲うって話だったぞ?んで、奴ら殲滅して狩場に来たら、殺るらしい」 「あーナナフシ結構PK強いからな…」 ナナフシとは、ギルド名で結構レベルの高い奴らもいる事で有名だしオレも何人かは、知り合いもいる。 どうするべきか...悩み所である。 ナナフシにその情報を確かめるのもオレは関わっちゃいけないよな... なんか今日は、その話題でぐったりしてしまった。ギルドに顔を出そうと思ったが、それも出来なくなった。 その情報が正しいかはわからないが、オレが森に行くしかないな。そうすれば、人の気配もわかるし... オレは酒場を後にして、着用していた装備をきっちりレベルに見合ったモノに着替えてからステータスのリセットをする。 狩場仕様のステータスでは、死なないかもしれないが万が一オレのレベルに近ければ死ぬ事も有り得るからな。 上がったばかりなだけに、今は死んでも痛くも痒くもない。ただ、ステータスの振り分けだけはどうしても時間がかかるからしばらくは狩りへ行かないでこのステータスで様子を見ようと思う。 攻撃力を剣が持てるまで下げて、剣はレベル80のものに持ち替えた。魔の貫通が大概通るから、魔力にもステータスを振り分けて1時間で全てを終わらせた。 鬱蒼とした暗い森の中へ足を踏み入れれば異世界のように闇に飲まれる。 松明に火を灯して、辺りを伺いながら狩場へと向かう。 隠匿の森は、隠者には最高の隠れ家であり、滅多に人は来ない場所だ。100以下のレベルでは一撃で死んでしまうから、たとえギルドの集まりでも連れては来ない。 下に敷き詰められた落ち葉が、カサカサと音を奏でる。 時折枯れ枝がパキパキと音を重ねると、とても雰囲気は不気味だった。オレも滅多に来ない場所なだけに狩場への道が正しいかもわからなくなりそうだ。 その時目にキラリと反射した光が入り慌てて松明を消した。数百メートル先に同じように松明を持った人がいる。 オレはストレージを開き、身軽な装備を着用して、木の上に飛び上がれば、1人の男が木の影に身を潜めていた。 (隠匿スキル高いな...) オレから見てもぼやけるのは、オレの持つ竜眼(罠やトラップを見抜く力)よりもレベルが高い証拠。確かに竜眼はステータス振り分けで60レベル程度に抑えてはいるが、鎧等にも補正がついているから実質は100程になるんだが。 コレで確実に相手のレベルは130超えと考えられる。鎧などの隠匿スキル補正はどう足掻いても、剣も含めた最高補正揃えて50程にしかならないから。 (参ったな...) こんなのに100前後が襲われたらひとたまりもない。 隠れ蓑という、そこらにあるモンスター避けのスキルだが隠匿スキルには効果絶大で、オレは今見つからないでいられる。 その間に、そいつに近寄りギルドを確認した。間違いなく...(サブのギルドかよ) 2度確認したが、どう見ても名前は変わらない。 そして、紫ネーム... PK(対人格闘)推奨のゲームではないから、PK場所もこの隠匿の、森のみだし死にたくなければ大概は寄り付かないが、本当に経験値の美味しいモンスターが出るから100前後のキャラ使いはここに来たがる傾向があるんだよな。 ネームの色は、白が通常で、PKする毎に色が変わっていく。ログイン計算で1日毎に黄色、オレンジ、赤、紫。確実に4日は人を狩り続けてるのだ。

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