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EpisodeⅩⅩ
オレはそいつの名前を確認して、そんな名前のギルメンがいたかを思い起こす。
“はれるや”その名前に記憶はない。
ガサリと動いた奴の後を気付かれないようにつけて行く。
ギルドマークは一覧から選んで好きに選べるが、桃のマークなんてサブのギルドくらいだ。
大概は見目のいいスタイリッシュなロゴだったり、飾り文字だったり後は龍や虎なんてのもあったがなかなかに厨二臭い。
でもそのマークが人気の中あのサブがももが好きだからとなんとも言えない理由で選んだのが今のギルドマーク。
やはり見間違いなのだろうかと、もう一度名前を確認しようと思った時だった。
「今日は頑張ろう」
いきなり声が聞こえた。
恐らく、こいつの狙いのメンバーだろうと視線を向け、もう一度奴に視線を戻したら既に相手は消えていた。
(ちっ、早いな...)
左右上下と見回しても、ヤツはどこにも姿がなく、やむを得ずに今こちらへ向かってきている集団を追うしかない。
姿が1人2人と見えたので木の上でそいつらを黙って見ていた。
もちろん相手のギルド名はナナフシ。
仕入れた情報どおりで、オレは木の陰に隠れてジッとその集団を見た。
もちろん辺りも警戒しつつなので、オレの集中力がどこまでもつか。
ながら(サブのギルド)の刺客は今もどこかに潜んでいるだろう。
オレはできるだけ距離を詰めて何があっても対応出来る体制を整えた。
その時だ。
前方のナナフシのメンバーが「うわぁ!」と声を上げたのだ。
オレは迷うことなくその集団の先頭へ走り出ると、回りも驚いたように
オレを見ている。けれどそんなのを気にしていられない。
目の前にいる真っ黒な装束の桃のギルドマークの男を睨み付けた。
「なんだお前」
ナナフシのメンバーが叫ぶがオレは声を上げずに、目の前の男に
腰から抜いた剣先を向けた。
「おいたが過ぎると、制裁がくるぞ?」
ちょっとは相手を煽れただろうかと思ったら、しっかりと喰い付かれた。
「ふはは、馬鹿じゃねぇの?お前から殺してやるよ」
自信ありげに、オレに刃を向けてきた。
そしてその速さに目を見張ったが、所詮はオレよりレベルの低いキャラ
どう足掻いても、オレに致死量のダメージは与えられない。
エルフキャラは早さが売りだが、オレだって無駄にステータスを振り分けした訳ではない。
そして、剣先は見事にオレの回避でかわされた。
「なっ!?」
剣先をふるふると震わせてオレと自分の短剣を見比べていた。
「だからおいたが過ぎると、オレみたいのが出てくるって言ってるだろ?」
そう言って、彼に剣先を押し込んだ。
「くそっ!覚えとけよ!」
そういい残して、彼は復活ポイントまで戻されたのだろう。姿を消した。
周りはポカーンとしていたが、オレが振り向いた途端みんなが剣先を向けて来た。
「そっちに危害は加えないけど、あいつレベルお前らより上だと思うぞ?」
それで勝てる見込みはあるのかと、投げかけたかったのだがそんな事言ったら
これから先、狙われる可能性も出るから黙っといた。
「お前、何なんだよ、何で俺らが来るの知ってるんだよ」
一人のソルジャーが叫ぶように聞いてきた。
うん、これは正直に伝えとこう。
「情報漏れてたぞ?酒場で聞いたからな。そんなゆるい情報だったら、あのエルフにも悟られてた可能性があるし…まぁ、この先に入ったらトラップもありそうだけどな?」
そう言ってオレは竜眼で見付けたトラップに木の枝を投げる。
ヒュン…風を切る音と共に飛んできた矢が目の前の木に刺さった。
「トラップ回避のスキルは?ちゃんと付いてるか?あいつは集団で来る者の相手もしているんだと、予測はしたか?そもそもに、自分たちで倒せると思い込んで、何の支度もなしにここに踏み込む自体、ナンセンスだろ」
ナンセンス…ちょっといってみたかった言葉を言えてほっこりした。
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