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EpisodeⅩⅩⅡ
何なんだと、オレは頭を掻きながら、いつものソファーへ腰を下ろした。
「ウチのメンバーが世話をかけた」
隠匿の森でのことだろう。心当たりもあったし、こいつが直に出向いて来るってことは、なんとなく察しが付いていた。
「いや、迷惑って程ではないし、まぁ、弱いものいじめしてたのは、ギルド騙ったソロキルプレイヤーだったみたいだからな」
そう言いながらソファーをポンポンと叩いて座れの合図を送った。
「おう、すまんな」
ドサッと音を立てて豪快にスプリングを軋ませると、オレはストレージからヤギの乳をコップに注いで渡した。
「ヤギか...生き残りか?」
昨年ヤギの伝染病が流行した時、かなりの数のヤギが犠牲になったが、うちはその伝染病から免れた。
まだハッキリとはしていないが餌が原因ではないかとオレは思ってる。
「あぁ」
極力会話はしたくないんだよ。
オレはコップに口を付けながら、隣の男を見た。内心、用がなければさっさと帰って欲しいのだ。
「なぁ吉田さんはギルド入らないの?」
「入らない」
理由までは必要ない。
「なんでだよ」
「...オレはレベ上げに付き合うのも付き合わされるのも、人のためだと動くのも、自分の判断でやりたいし、人にどうこう言われたくない」
間違いなくそれはオレの根底にあるものだ。どれだけ尽くしても、飽きられれば。
捨てられる。
「うちのサブマス席空いてるぞ?」
「だから、やらねぇって」
こうやって誘われるのも、サブ以外はは久し振りだな。
と、思ったらまたもやノック音。
やっと来たか、アホエルフ。
「さ、先約が来たから話はここまでだ」
両手で持っていたカップを取ると、手を差し出して出口を案内した。
「わかったよ」
素直に聞いてくれて助かった。
ドアを開くと、オレ以外の人間が出てきたからか、一瞬驚いた表情をしてから、誰か理解したのだろう。
サブはひとつ頭を下げた。
そして、何を思ったのか突然...
「吉田、浮気?」
「はえっ!?」
オレが驚いてサブを見たら、向こうのギルマスは驚いたようにオレを見て...なんの三角関係よこれ。
「な、何言ってんだよ、サブ」
「だって、どうせギルドに誘われたろ?」
「...まぁ、そこら辺はどうでもいいだろ?それに、お前のもんになった覚えはねぇぞ!」
膨れっ面で、さもオレが悪いかのような言い回ししやがって!なんか腹たったからドア閉めて1人で部屋に戻った。
ら。
ドンドンと、ドアがノックされた。
「よーしーだーあーけーてー」
...声が怖いわ。
ドアを開いたら、泣きそうな顔のサブがポツンと立ってた。
「開けた」
ドアからもう1人、ちゃんと入れるように開けたのに首を傾げて聞いてくる。
「入っていいか?」
来るって言ったの自分の癖によくわからん奴だなと思いながら、身体をドアから離し更に入りやすいようにする。
「好きにしたらいい」
最初に約束取り付けたのお前だろうにと思いつつ、家の中へと誘導した。
少し前まで違うギルドのギルマスが座ってた場所に、これまた違うギルドのギルマス...なんか変な感じだな。
そう思いながら、座るとサブがオレの前に立ち塞がるように立った。
「なんだよ」
「行かないよね?他のギルド」
心配はそこかよ。
「行かねぇよ」
「俺のとこは?」
「行かねぇ」
何度この押し問答した事やら。
やれやれ。
オレの答えに納得したのかそうでないのかは読み取れなかったが、サブがオレの手を取りジッと見詰めてきて怯んだ。
コミュ症のオレをそこまで見るな!!!!
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