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EpisodeⅩⅩⅤ

 なんてこったと、思うしか出来ないが、サブがずっと横にいる安心感にオレは心落ち着けることが出来た。  子供の頃、熱を出して親が横にいてくれて...そんな安心感をサブから与えられている事にほっこりとしてしまう。 「吉田...聞こえるか?」 「ん...」 「お前、面倒見てくれるのいるのか?」 家...などの言葉はワード扱いで言えないから、多分リアルでって事だろうな。 「いな、い...」 「いないのか...病院は?」 「...行けてない」  そして沈黙...でもオレも話す気力はなくて、倦怠感とこのまま孤独死するんじゃないかという意味のわからない恐怖にとらわれていた。  手を伸ばせばサブはいる。オレの横になってるソファに座ってオレの肩に手を置いてるからそれはわかる。  しばらく無言で、そして不意に身体が軽くなった。なんでかはわからないが病気が落ち着いたのか、死んだのか。  いや、生きてるよな。 「サブ...なんか、急に楽になった...」 そう伝えたら、オレの前に座ってた人はサブではなく... 「はえっ!?誰お前?」  同じエルフだが、サブではない。明らかにレベルの低い装備の装飾なども全くされていないキャラ。オレの知り合いにはいない黒髪のエルフだった。 「あ、気付いた?オレ山ちゃん」  誰だよそれ!てか、なんでサブの変わりにいるんだよ!あいつの指示か!? 「...あの、なんでここに?」 「兄貴に頼まれたからね」  まてまて、頭が追い付かねぇ... 兄貴ってのは、用務員...弟って...山田か!?山田弟か!?やべ、クラスメイトじゃねぇか!勘弁してくれ。 てか、アイツどこ行きやがった!? 「くすくす...何百面相してんの?大丈夫だよ、兄貴が君の傍にいるよ」 「えっ!?いや、は?傍って...」 「血相変えてたからね、不審者で通報されてなければ君の傍にいると思うよ」  全く意味がわからん...え?オレって身バレ(身分が知られてる)してんの?えっ、どういう... 「ほら、目を閉じてゆっくりしときな、兄貴の苦労を無にしてやらないでな」  今、違う意味でドキドキしてるし、怖いんだが。結局オレだったってバレてるんだよな?そして、そのオレの面倒見てくれてるって事だよな?目覚めないとヤバくね?オレ、どうなんの? 「い、今何時?」 「リアタイだと、20時」  早退して寝たから確かにそんなもんだろうけど、オレいつ目覚めるの? 「山田...いや、山ちゃんはオレ知ってた?」 「あれ、兄貴言ってないんだ?知ってるよ」  サブめぇ。会ったらお仕置きが必要だな。いや待て、リアルで会ったらオレが逆に処刑されてる気分になる! 「てか、うん混乱してるみたいだから詳しくは兄貴に聞きなね?俺は余計なこと言うなって釘刺されてるから」 「...何が何だか」  混乱極まりない!  いや、あのコインが全てだよな。 アレを返してから、やたらサブはオレに絡んで来た...リアルで弁当まで持ってきたんだ。  そうか、オレは知られたのか。  一気に脱力感が襲って来て、訳の分からないままに意識が遠くなった。 ゲームでも、リアルでもない世界にオレはポツンと座っていた。  周りは何も目に入らない真っ白な世界で、オレはその空間があまりに寂しくて苦しくて、ポロポロと涙を零した。  気が付けば大きな鳥がオレの背中にいて、その大きな羽根でオレをつつんだ。  あぁ、これは夢なのだ。 「ねぇ、吉田...」  それはなんとも言えないほどに甘く、その声に身体が溶けてしまいそうな。そんな優しき声色が誰なのか知りたいのに、目が開かない。 「ね...」  甘く耳に届く声に、オレは意識を戻したくて、必死に目を開こうとした...けれど、それは叶わずに珍しく夢の世界へ引き込まれた。

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