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Episode ⅩⅩⅦ
全く思考が追いつかない。病室から出されてしまった母とあの人。代わりに入ってきた先生と思わしき人がオレの脈を取ったり目に眩しい光を当てたりと忙しなく動いている。
声も出せないオレは黙ってそれをされるがままの、人形みたいになってる。身体の筋肉は恐らく衰えているんだろう。ただ全く動かせないという程ではない。
恐らく...今のこのオレがリアル。だって周りにアイコンもないし、すごい倦怠感とまだ熱があるのだろう。とても身体がだるい。
「君の名前は言える?」
「......」
先生に聞かれて答えたけど口は動くのに、声は出なかった。そんなオレを見てにっこり笑ってよく頑張ったねと一言残して先生は出て行った。病室にはオレと戻ってきたサブがいて、何となく気まずい。
「吉田...よく頑張ってくれたな...俺の事誰かわかる?」
オレは頷いた。サブ以外に考えられなかったから。
「話はまだ出来なそうだな?」
オレは頷いて、アイツの手を引き寄せ、その平に‘ サブ’と書いてやれば、嬉しそに破顔した。
でもオレの見ていたイケメンエルフでもなく、あの用務員ともまた違った。髪はそこまで長くないし、顔はイケメンと言えば、そうなのかもしれない...といった感じだ。
「目が覚めて良かった...」
恐らく学校に行っていたのも、ゲームの世界も、全てオレの夢の中だったのだろうと思うが...だったらオレの学校生活は?ずっと入院していたなら、オレは間違いなく学校生活を送れてはないはずなんだ。
「頭が混乱してるだろ?詳しく説明するのは熱が下がってからだ。今はゆっくり身体を休めろ」
オレは頷き目を閉じた。本当に身体が気だるくて、眠気も酷くて...だから眠った。
眠るなんて、久しぶりだった。
しかし疑問ばかりが浮かんで、モヤモヤしてる事実は変えられない。
そして夢を見た。
ゲームのチュートリアルみたいに真っ暗な空間の中魔法陣みたいなものが描かれ、青白く発光していて...光はそこだけでオレは途方に暮れた。
“吉田...この声は聞こえているか?”
ゲームの世界と同じ声、サブだった。
オレは思わずキョロキョロと辺りを確認した。でも人の気配はおろか、オレ以外の生物はここにはいなそうな雰囲気に少し怖くなった。
“今から行くから怖がるなよ?”
そういわれオレは魔法陣の真ん中に尻をドスンと置いて、足を抱き込み所謂体育座りと呼ばれる座り方をして辺りを見回した。
ふぉん...と、聞きなれたログイン音に顔を上げれば、ゲームのサブが現れた。
「吉田...」
イケメンエルフめ...オレは、リアルのオレそのものなのに、なんでお前だけイケメンエルフなんだよ!と、文句を付けたいが我慢した。
それよりも知りたいことが沢山あるからだ。ジッと見てたらサブもオレの横に腰を下ろした。
「あの世界が...オレの本物の世界だよな?」
入院していて筋肉だって元々そんなにある方じゃなかったが更に削げ落ちてた。管に繋がれていたオレが本来のオレの姿。
「直接潜れて痛みも感じず過ごせる...そんな機械を開発していた会社があって、そこに頼み込んで試作を使わせてもらったんだ...本来は宇宙飛行士とかの実地訓練用に開発されたんだけど、景色の入れ替えは可能だし、同じ機械で潜った者同士での接触も可能だったんだよ...だから、君にそれを付ける事を親御さんに許可もらって...」
そこから、シュンと気分を落としてしまったサブ。
そんな技術があるなんて知らなかったから、かなり混乱したけど...結局あの世界は全て...
ちょっと待て!いやいやいや!オレは受験も出来てねぇの!?夢の世界では高校生だが、行ってねぇの!?え?なんのための授業!?
オレが混乱しても当たり前じゃね?夢で受けた授業の中身だってオレは分からなかった問題ばかりだったはず...
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