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「わぁ、お助けヒロインだ!」 「可愛い!」 「サインして!」 幼児たちや保護者などにサインや握手を求められる。 顔はにっこり笑顔、声出しはNG。 あらかじめマネージャーたちと打ち合わせ済みの海は教えられた通りに振舞った。 うう、早く帰りたいなあ。 大体、こんな格好、すごく恥ずかしいんですけど。 ツインテールのウイッグ。 あっちこっちに特大のリボン。 フリルつきのミニスカートにニーハイブーツ。 慣れないヒールでただ歩くのがとても怖いです……。 普段は前髪で隠している大きな双眸には自前の睫毛にとりあえずマスカラを。 うう、目がしばしばします……。 でも空姉ちゃんが平日毎日補講にならないためにも今日一日、僕、何とか頑張ります……。 本当はとても嫌だけど。 テレビ撮影とか聞いてなかったし……。 早く家に帰って本を読みたいです……。 芋掘り大会も終盤に差し掛かり、海があとちょっとで帰れると一安心したときだった。 焼き芋販売のメロディがどこからともなく聞こえてきた。 目を向けると芋畑の向こうに焼き芋屋と汚い字で書かれた大型トラックが停まっているではないか。 やたらインクが垂れていて、何だか、とてつもなく怪しい。 ま、まさか。 そんなわけないですよね? 引き攣った海の懸念は残念ながらも的中した。 トラックのトレーラーがおもむろに開かれたかと思うと、そこから、夥しい数の触手がうねうねと……。 「きゃああああ!」 「マッドネスだ!」 トラックの運転席から白衣を翻して飛び降りたのはマッドネスの一人、黒縁眼鏡が唯一のトレードマークであるDr.クロだった。 「お助けヒロイン、今日こそお前の戦意を喪失させてやる」 う、う、う、嘘でしょう!? 僕、森羅万象の力とかないですよ!? 戦えませんよ!? 「海君、ファイティングポーズだけでも!」 「クロは弱いですから大丈夫!」 えええええ! 正直ただただ怖いです! クロさんはともかく、あの触手、何ですか!? 逃げ惑う一般市民の向こうでトレーラーから姿を現したのは。 「俺の実験体32号だ。召還術で適当に魔界から呼び出した魔物と俺のマウスを掛け合わせ……って、こら、暴走するなっ」 クロの説明の途中で触手クリーチャーは海目掛けて突進してきた。

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