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「こんなにエロい奴だったのかよ、お前」
黒縁眼鏡越しに少し呆れたような、乾いた熱を帯びた眼差しを向けられて、海は胸の内にまで妙な昂ぶりが行き渡るのを感じた。
「変……です、こんなの……初めて……」
「そりゃあ、淫獣なんて現実世界にはそうそういないからな」
笑いながらそう呟いて、奥を突きながら、ニーハイブーツを器用に脱がす。
「もっと……クロさん……」
海は腕を伸ばしてクロを求める。
求められたクロは上体を前に倒して海にキスした。
「んっ……ふ……ぁ」
熱をもった呼吸ごとクロに奪われる。
体の線をなぞる長く繊細な指に背筋を震わせて海はクロにしがみついた。
「あっ、あっ、クロさぁん……っ」
「お前、やっぱり……ヒロインじゃないな?」
ぴたりと動きが止まった。
「ぁ……っ」
「お前、誰だ?」
クロは海を覗き込んだ。
ごめんなさい、空姉ちゃん……。
僕はこの人に何故だか嘘をつけません。
「僕……は……ヒロインの弟で……お姉ちゃんは……追試に行ってて……代わりに僕が……」
「追試……」
クロは吹き出す。
微妙な振動が起こって海は首を窄めた。
「やっ……ぁ」
「道理でな。いつもは勇ましいヒロインが易々と触手に捕まって、」
キュ、と海の昂ぶりを握り締める。
「あるはずのないコレを活発化させるわけないものな」
腰の動きは止めたまま緩々と上下に愛撫した。
「あっ、やぁ……クロさぁん……」
「俺が守ってやりたくなるわけ、ないものな」
手術台に片手を突き、片手で海の熱源をしごきながら、クロは律動を再開した。
海は弓なりに背中を反らしてこどもみたいに素直に黒縁眼鏡のマッドサイエンティストに明かした。
「出ちゃう、出ちゃうよ……」
「ん、俺も……そろそろ……」
クロは少し苦しげに眉根を寄せ、ラストスパートといわんばかりに腰を振り立てた。
深く結びつけた下肢をブルリと身震いさせて、二人は、ほぼ同時に……。
「大変だったってね、海」
「……うん、そうだね」
「淫獣クリーチャーに襲撃されて一般市民は無事逃げられたけれど、テレビクルーとマネージャーたちは毒が回って乱交状態だったって」
「そ、そうなの?」
「だから自分たちで記録ぜんぶ消したんだって」
「……ふぅん」
「海はよく無事でいられたもんだね」
追試を無事終えた空の問いかけに海は曖昧に頷いた。
「ま、相手がクロでよかったよかった。他の奴だったらひん剥かれてたかも」
……ひん剥かれたというか。
……自分からひん剥いたというか。
絶対にクロさんとのことは空姉ちゃんには秘密だ。
友達にもお母さんにもお父さんにも、世界中のみんなにナイショです。
「今度、クロが襲ってきたらボッコボコにしてあげるね」
ああ、それだけはやめて、空姉ちゃん……。
世界支配を企むマッドネスの一員、マッドサイエンティストのクロさんは今日から僕の恋人なんです、ハイ……。
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