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忠告してくれた空には悪かったが海は襲撃現場に行ってみた。 煙が立ち込める中、逃げ惑う人々、カメラを向ける人々、お助けスーパーヒロインの出現にはしゃぐ人々。 マッドサイエンティストは二人いた。 「また来たの、コバエ姫」 一人は詰襟の学生服に白衣を整然と纏う、片目に眼帯をした、見目麗しい美貌少年、Dr.アイレス。 アイレスはクロウという、黒いマントをすっぽりかぶった、薄笑いを刻むピエロの仮面をつけた触手生物を従えて街灯に腰掛けていた。 「勇ましいお姫様、早く永遠の眠りについたらどうでしょうかねぇ」 一人は銀縁の眼鏡をかけ、長い銀髪を組紐で一つに縛り、血塗れの白衣を纏う変態男、Dr.(ぎん)。 先ほどから建物を破壊し、人々を混乱に陥れているのは、彼が連れてきた……体中に男女の生殖器を生やし、男性器から何やら白濁した粘液を放出しまくる、正視に耐えかねるクリーチャーだった。 瓦礫の影から暴れ回るクリーチャーを目にして海は思わず口元を押さえる。 何ですか、あれ、すごく気持ち悪い……。 だけどクロさんは今回来ていないみたいです。 危ないし、空姉ちゃんに言われた通り、僕、帰ります。 海が回れ右をして帰ろうとした矢先、醜悪なクリーチャーに激昂した空が容赦ない鉄槌を下した。 引っこ抜いた電柱を生殖器だらけの図体にぶっっっ刺したのだ。 「わぁ、さすがヒロイン!」 「やっつけろ!!」 空の猛攻に人々が盛り上がる。 彼女の強さを誰よりも理解している海は、ちらりと背中越しに見届けたのみで、煙で視界が悪い表通りを戻ろうとした。 視線の先にクロウがいた。 ジュエリー店の前で、店員が倒れ、ガラスの破片なども四散している。 非常にレアな原石が使用された光り輝く宝石をクロウの夥しい触手のいくつかが握り締めていた。 「あ……」 海はその場で固まった。 するとクロウの仮面の模様が薄笑いから怒りの表情に変わったではないか。 ぶわりとマントを翻してクロウは海目掛け突っ込んできた……!! 濛々と立ち込める煙。 すぐ近くで派手に聞こえる爆音、歓声、クリーチャーの悲鳴。 自分をしっかりと抱き上げる両腕。 「あ……」 きつく閉じていた目を恐る恐る開いてみれば、そこに写るのは、黒縁眼鏡をかけた、恋人の顔。

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