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「クロさん」
マッドネスの一人、Dr.クロは小柄な海を抱き抱えたままクロウを睨みつけた。
するとクロウの仮面の模様が怒りから悲しみの表情に変わったではないか。
「……クロ様?」
「あらあら、クロ、君ってば一体何してるんです?」
白衣の裾を靡かせてジュエリー店の前に降り立ったアイレスと銀は、海を抱き上げるクロと向かい合った。
「ど……どうして民衆を助けるのです? クロ様?」
「単細胞のお姫様を僕の特製ダッチワイフで引きつけておいて、資金源を調達する、その計画は成功しましたが。君のそれ、腑に落ちないですよ?」
クロは特に何も弁解しなかった。
海をそっと地面に下ろすと、何も言わず、二人の元へと歩み寄っていく。
煙に紛れて見えなくなるまで、海は、恋人の背中を見送っていた。
クロさん、大丈夫でしょうか。
僕を助けたことで立場が危うくなる……そんなことにならないでしょうか。
グラさんは別に何も咎めてこなかったけれど、あの二人、アイレスさんと銀さんは……どうなんでしょう。
ああ、気になってご飯が喉を通らないです。
向かい側で戦闘を終えた空が大盛りの白ご飯をかっ込むのに対し、海は、ろくに食事に手をつけられずにいた。
そして海はこっそり真夜中に家を抜け出した。
向かう先は当然マッドネスの秘密地下実験施設だ。
秘密の抜け穴を通って辿り着いた海はあるものに出迎えられた。
「カァ」
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