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4-ド・キ・ド・キ☆バレンタインデー
「グラマラス様が来たわよ~ん」
ラボにて魔界から妖魔を召喚中だったDr.クロは突然の訪問者に、正直、いらっとした。
魔方陣から奇怪な声を上げてこちら側に出かかっていた、何かしらの魔物の頭をぐいっと魔界に無理矢理押し戻し、召喚を中断する。
薄手の手袋を外し、マスクを引き剥がし、振り返った。
「じゃーん、はい、どうぞ」
文句を言おうとしたクロに突きつけられたのは、有名なスイーツ店のパティシエが考案したという、シックな包装で彩られた高級チョコレート入りの箱。
「何だ、これ」
「やぁね、今日、バレンタインデーよ?」
網タイツにピンヒールのパンプスを音立たせ、ミニスカナース姿のDr.グラマラスはポカンとしているクロに言う。
ああ、そうか、今日は二月……何日だ?
「最近、実験で徹夜続きよねぇ。お肌に悪いわよ~」
「余計なお世話だ」
「うふふっ」
グラマラスペットのマンボウがだらだら涎を垂らしていて、ラボが汚れると思い、クロは長居しそうな気配を見せるグラマラスを無理矢理ぐいっと通路に押し戻したのだった。
「クロ様、お手つきでしょうか?」
手術台に頬杖を突いて寝かかっていたクロは扉がノックされる音にはたと意識を呼び覚まされた。
開いてみればDr.アイレスが申し訳なさそうに立っていた。
「クロ様のために薄汚い下らない俗世から買ってきました」
普段は蝋の色をした頬を赤らめてもじもじしながら、中傷としか思えない台詞を吐き、ブランド物のサングラスが入った、こげ茶色のリボンが巻かれたケースを差し出してくる。
俺、サングラスはかけないんだがな……。
「悪いな、すまない、アイレス」
クロが礼を告げるとアイレスは益々もじもじし、美麗な片目に涙まで溜め「どうしよう、どうしよう」と、対応している方がどうしようと困惑するような振舞をし始めた。
慣れているクロは「じゃあ魔獣の調教、頑張れよ」と言って扉をがちゃりと閉めた。
アイレスは血塗られたような唇をにっこり半月型に歪める。
「クロ様のために血反吐を吐くまで頑張ります」と扉に頬を寄せて囁き、ルンルンとした足取りで薄暗い通路を去っていった。
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