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7-ド・キ・ド・キ☆ホワイトデー

バレンタインデーに海は手作りのガトーショコラをクロに贈った。 後日、ホワイトデーのお返しは何がいいかと聞かれると、海はぶるぶる首を左右に振った。 「そんな、お返しとか、僕、別にいらないです」 「そんな寂しいこと言わないでくれ、海」 クロの言葉に海は困り果て、どうしようと迷った果て、ぽつりと言う。 「美術館で絵本展があるんです」 ホワイトデー当日。 学校が終わった海は待ち合わせの場所に向かった。 もちろん双子の姉の空を含め、みんなに内緒で。 街外れに建つ美術館近くにある噴水広場。 青空の下で鳩がぽっぽと餌を探す中、ベンチの一つにクロは座っていた。 「クロさん」 「海」 白衣の代わりに黒のパーカーを羽織ったクロ。 が、いつもと同じ黒縁眼鏡をかけた彼は、どこからどう見てもマッドネスの一員であるマッドサイエンティストのクロだ。 「俺はお前の姉みたいに目立ってないから変装しなくたってばれない」 クロは平然とそう言ってのけ、心配する海を促し、美術館へと足を運んだ。 「ーーな、ばれなかっただろ」 絵本展を見終わって美術館を颯爽と後にし、夕暮れの訪れに外灯が点り始めた噴水広場へ戻り、二人は向かい合う。 「さ、次はどこへ行くか」 まだ時間はいっぱいある。 海の行きたいところに行こう。 「どこに行きたい、海?」 クロが手を差し出してきたので海も手を伸ばした。 中間地点で二人の掌が重なる。 オレンジ色の明かりに照らされて、海は、自分を見つめるクロに答えを伝えた。 「僕、水族館に行きたいです」 「水族館?」 「水槽がいっぱいあって、不思議な魚や生き物が泳いでる、水族館です」 「……」 「地下にあって、みんなが知らない、秘密の場所にあります」 海は細く長い繊細な指をきゅっと握った。 クロも笑って、小さな手を握り返した。 「いいよ、行こう、海」

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