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それは人間の体つきをしていた。
人型の魔物はなかなか釣れない、何故ならば、知能ある上級クラスに値するからだ。
ただ、人間の体つきといっても、それはそれは小さな幼児体型で、ふわふわした髪からは黒い猫耳がぴょこんと生えている。
素っ裸のため丸出しとなった可愛らしいお尻の尾てい骨からは長い尻尾が。
銀はふわふわの頭をむんずと掴むとそれを容赦なく自分の目の高さまで持ち上げた。
「……」
それはべそべそと泣いていた。
興味津々に自分を見つめてくる銀に完全に怯えている。
あ、オスですねぇ。
人型にしては随分とお馬鹿そうですねぇ。
「……うにゃ……」
あら、喋れるんですねぇ。
どうしましょう、もっとイボイボした、ぐちゃぐちゃっとしたもの、釣りたかったんですがねぇ。
ぐぅぅぅう~
それのお腹の虫が鳴った。
銀はそれを床に下ろすとほにゃららの肉を蹴っ飛ばして近くに転がしてやったのだが。
食べない。
魔界を彷徨っていたそれは、食べられもしない肉塊がふわふわ漂っているのを見上げ、好奇心旺盛よろしく、ただじゃれついただけで。
腹をぐうぐう鳴らしながら、それはそれは小さな猫耳魔物は、いきなり釣り上げられてびっくりし、知らない場所と知らない変態に怯え、べそべそと泣き続けた。
不思議な魔物ですね、低脳のようですが、感情がちゃんと備わっている。
こういうタイプを見るのは初めてです。
他のマッドネス誰一人持っていないでしょうね、こんなの。
銀はしゃがみ込むと掌を差し出して猫を呼ぶように唇を小刻みに鳴らした。
「君、興味深いですねぇ」
「……うみゃ」
「ちょっと飼育してみましょうかねぇ」
まん丸の大きな瞳に涙をいっぱい溜めたそれは自分を呼ぶ銀に小首を傾げるのだった。
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