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ちょっと待ってなさい。
奥に引っ込んだグラマラスは、数分後、再び銀の元へ戻ってきた。
瀟洒な造りのテーブルにミルクの注がれた皿が置かれる。
「これ、貴女から搾り立ての――」
「お得なタイムセールで買ってきたミルクだけど飲むかしら、ほら、近づけてごらんなさいよ」
銀は膝の上で大人しくしていた猫耳魔物を持ち上げると、皿と対面させてみた。
猫耳魔物は大きな瞳をさらに大きくさせ、すんすん、匂いを嗅ぐ。
もちろんこのようにミルクを振舞われたことなど一度もない。
母の乳を吸ってきた猫耳魔物には飲み方がてんでわからなかった。
「飲みませんねぇ」
「でも興味は示してるわよ」
「得体の知れない女が持ってきたものだからいぶかしんでいるのかもしれないですねぇ」
「あんたに言われたくないわよ」
興味津々に匂いは嗅いでいるが一向に口をつけようとしない猫耳魔物。
「ストロー、買ってくる? それともコップに注ぎ直してみる?」
「まだるっこしいですねぇ」
銀は皿を手に取った。
まさか無理矢理飲ませるつもりでは、向かい側にいたグラマラスは危惧して立ち上がりかけた。
銀は器用に零さぬよう皿からミルクを飲む、のではなく、自身の口に含むと。
膝の上で猫耳魔物の向きをおもむろに変えると、上向かせ、ぽってりした唇に嗜虐的唇を重ねた。
そのまま口移しでミルクを与えた。
ごくん。
銀から流し込まれたミルクを猫耳魔物は素直に飲み込んだ。
「うにゃ」
「ほら、飲みましたよ。いい子ですねぇ、よしよし」
血塗れの白衣にじゃれつく猫耳魔物に銀は微笑んでみせる。
唇を拭ってやると、その青白く長い指にもじゃれついて、猫耳魔物は呼号した。
「まま、まま」
その呼号を聞いてグラマラスは飲みかけていた豆乳を噴出した。
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