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「急に白濁汁なんぞを吐き出して非常識な女ですねぇ、しかも豆腐臭いですよ」
「汁じゃないわよ、さっぱり飲みやすい調整豆乳よ、それよりママってなによ」
「どうも母親と認識されてしまったようでしてねぇ」
「うみゃ、まま」
銀の腕の中で猫耳魔物は次のミルクを強請る。
皿の分全てを口移しで与えるというのも一苦労なので、銀は飲み方を丁寧に教えてやることにした。
「ほら、こうしてですねぇ、舌を伸ばして」
「うみゅ」
「お皿から掬い取るんですよ、こういう風に舌先をくいっと曲げて」
「うみゅ?」
「こうですよ、ほら」
「別次元の卑猥なレッスンみたいよ、それ」
やっぱりコップを持ってくるわ。
そう言ってまた奥に引っ込んだグラマラスは、数分後、再び銀の元へ戻ってきた。
片手にはマグカップ、もう片方の手には服らしきものを抱えている。
「ずっと素っ裸でいさせるのも可哀想でしょ」
「あら、サイズ、合いそうですねぇ、ですがどうして貴女がこのようなお洋服をお持ちなんですかねぇ」
「万能乙女さんのグラマラスはな~んでも持っているの」
「うふふ、気持ち悪いですねぇ、ねぇ?」
「うみゃみゃ」
グラマラスが持ってきた洋服は幼児用のフード付きカバーオールだった。
ピンク色の星柄でどう見ても女の子用だが、構わず、着せてやる。
ご丁寧に長い尻尾用の穴もちゃんと裁断済みだった
「うみゅ?」
「やだぁ、かわいい、かわいいわぁ」
体つきが人間の乳幼児である猫耳魔物にカバーオールはぴったりだった。
ふわふわした髪から覗く本物の黒い猫耳がぴょこんと覗いているのが、また、愛らしさに拍車をかけている。
初めて着せられた洋服に戸惑っているのか、大きな双眸をより大きくまん丸に見張らせ、猫耳魔物はがじがじ袖をかじり出した。
「それは食べられませんよ」
再び膝上に猫耳魔物を乗せ、マグカップに注いだミルクを口元へ持っていく。
口に含ませると、幼子さながらの無邪気な戯れでぶはっと吐き出し、銀の指は途端に濡れた。
「あらあら、悪い子ですねぇ」
普段、口に出して言うのも憚られるような残酷実験を日夜繰り返し、ほにゃららの臓物の粘液で汚れることもしばしば、血塗れの白衣を平然と纏う銀は、猫耳魔物の粗相など気にもならない。
猫耳魔物は銀の長く青白い指についたミルクをぺろぺろ舐めてご満悦のようだ。
「なんだかホントに親子みたい、不思議~」
「貴女という存在の不可解さに比べればまるで平凡ですがねぇ」
「ねぇ、名前はなんていうの?」
名前。
銀は自分の指を一心にしゃぶる猫耳魔物をまじまじと見下ろした。
「みるくです」
「……それ、今、考えなかった?」
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