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天気のいい昼下がり。
青空へ舞い上がる色とりどりの風船。
甲高いメロディと共に回るメリーゴーランドにコーヒーカップ。
囲いの向こうでは様々な動物を模した乗り物が子供を乗せてゆったり走行している。
ピエロのパントマイムに送られる盛大な拍手。
「どれに乗りたいんだ?」
海はクロと遊園地に来ていた。
「乗るんじゃなくて、雰囲気が好きなんです」
「お前、インドアに見えたから、なんか意外だ」
「家で本を読むの、好きです。だけど、こういう明るい場所でのんびりするのも好きです」
「ふぅん」
おたまをグラマラスに預けてきた海は横に並ぶクロをちらっと見上げた。
クロは白衣の代わりに黒のパーカーを羽織って、ポケットに両手を突っ込んでいた。
一応、マッドネスの一員だ。
ヒロインこと海の姉である空や他のマッドネスが普段変装しているのに対し、クロは、その点を全く気にかけていない。
「美術館に行ったこと、思い出します」
メロンフロートを買ってくれたクロにぺこっと礼をして、パラソルつきの白いテーブルに着くと、海は言う。
コーヒーフロートのアイスクリーム部分をスプーンでつっついていたクロは聞き返した。
「美術館? 俺とお前で行ったのか?」
「一緒に絵本展に行って、その時も、クロさんその格好で館内を歩き回ってました」
「俺は目立たないから変装しなくたってばれない」
当時と同じようなことをクロが言ったので、海は、思わず笑った。
「なんだ?」
「……なんでもないです」
爽やかな色を浮かべる飲み物をストローで飲む海を見、クロは、何気ない思いつきで手を伸ばす。
「お前、前髪がえらく長いな。もうちょっと上げれば表情が……」
顔の上半分を隠す前髪を掌でかき上げた瞬間。
クロは現れた双眸に釘づけになった。
「え?」
海は慌てて前髪を元に戻す。
そして不安そうにクロをそっと目にした。
「お前、ヒロインとかなり似てないか?」
「……僕、双子の弟です」
こうも忘れ去られてしまうものなんだ。
薄れていたショックが再び大きくなり、海は、またしゅんとした。
まさか宿敵であるヒロインの弟……と驚いていたクロであったが、傍目にも明らかに落ち込んでいる海の様子に、ちょっと笑ってしまった。
「お前、そんなに俺のことが好きなのか」
しゅんとしていたはずの海はその質問に真っ赤になった。
クロは笑みを深め、海の頭を撫でると、残り半分になったコーヒーフロートとメロンフロートをとりかえっこした。
「他は?」
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