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「そうよ。ちなみに輸血も縫合もぜーんぶ出鱈目にしてあげたわよ? 感謝なさい?」
ナースの出で立ちでありながら女医の真似事を遣って退けたマッドサイエンティストのDr.グラマラスはうふふと笑う。
点滴中の銀はゆっくりと身を起こした。
寝台にしがみつく、大きくなったみるくを見下ろす。
「貴方のおかげで助かりましたよ、みるく」
「うみゃ」
左手で耳を撫でてやると自ら掌に頭を擦りつけてきた。
「まま、よかった、しぬかとおもった」
まともな言葉を喋らなかったみるくは、大きくなった途端、意味ある言語を話せるようになったらしい。
ブランケットに覆われた銀の膝上に抱きつくと、みるくは、すぐに寝てしまった。
「この子、いきなり大きくなったきっかけは?」
「恐らく僕を助けるためかと」
「まぁステキ、泣かせるわぁ、まるでお姫様を守る騎士みたい」
「偽りの母を守る哀れな子ですよ」
銀はふわふわした髪を梳いてやりながら呟く。
「母親はこの子を探しているのでしょうか」
「もしくは魔界の片隅でもう死んでいるか」
「……」
「やーね、おせんちになっちゃって。あんたそれでもマッドネス? 変態Dr.銀?」
見なさいよ、その寝顔。
幸せそうに口開けちゃって、可愛いじゃないの。
偽りでも哀れでもないわよ。
「らしくないわね、銀?」
銀は口を開いていたみるくの下唇を長細い指先でなぞってみた。
すると、何の躊躇もなく、みるくはその指をぱくっと咥えた。
なかなかの吸引力で吸いついてくる。
「……お乳でも吸っているつもりでしょうかね。母性本能が湧いてくるようです」
「は? 男女の性器を模したクリーチャー造りが趣味の変態男に母性本能?」
「守ってあげたくなります。実際は守られてしまいましたが」
「ねぇ、それって」
恋愛感情じゃないの?
「……なんですか、それ、下らない」
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