46 / 97
14-3
雑に羽織った白衣の裾を翻してやってきたクロ。
いい仲にある少年の頭を撫で、黒白ボーダーの囚人服じみたツナギを着る猫耳魔物、その腕に抱かれている銀を見、眉根を寄せる。
「また罠にでも仕掛けるつもりか、銀」
「僕ぁ、大怪我を負ったばかりの身でしてねぇ、罠を見繕う余力なんかありませんよ、お生憎様」
「この子にまた何かあったら問答無用に殺す、俺がそう言ったのは覚えてるよな」
「あの、クロさん、僕は大丈夫です」
庇うように正面に立ったクロに、少年は、慌てて声をかけた。
「僕から話しかけたんです、だから、けんかしないでください」
「……」
クロは悪びれもせずにまだ堂々と殺気を放っている。
慣れっこの銀は別にどうとも思わなかった、の、だが。
「フーーーーー!!」
クロの殺気にみるくが反応してしまった。
銀が視線を向けた先には攻撃色に満ちた大きな双眸があった。
いつの間にか乱杭歯が鋭い尖りを帯びていた。
「ぷぎぎゃー!」
おたまが反応して少年の背中に大慌てで隠れた。
気性の荒い魔獣の如く殺気立つみるく、その一瞬の変貌に少年は思わず息を呑む。
そんな少年をさらに庇うようにして立ち塞がるクロ。
袖口から愛用のメスを瞬時に取り出し、いざという時のため、構えた。
銀はまじまじとみるくを見つめた。
自分自身を壊れ物のように抱く腕の力加減はそのままだ。
しかし愛くるしかった表情は一変し、外敵と見做したクロをぎっと見据え、唸っている。
体中の血管がざわざわ脈打っているようだ。
まさかこの子にはもう一段階、変身形態があるのでしょうか?
ともだちにシェアしよう!