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雑に羽織った白衣の裾を翻してやってきたクロ。 いい仲にある少年の頭を撫で、黒白ボーダーの囚人服じみたツナギを着る猫耳魔物、その腕に抱かれている銀を見、眉根を寄せる。 「また罠にでも仕掛けるつもりか、銀」 「僕ぁ、大怪我を負ったばかりの身でしてねぇ、罠を見繕う余力なんかありませんよ、お生憎様」 「この子にまた何かあったら問答無用に殺す、俺がそう言ったのは覚えてるよな」 「あの、クロさん、僕は大丈夫です」 庇うように正面に立ったクロに、少年は、慌てて声をかけた。 「僕から話しかけたんです、だから、けんかしないでください」 「……」 クロは悪びれもせずにまだ堂々と殺気を放っている。 慣れっこの銀は別にどうとも思わなかった、の、だが。 「フーーーーー!!」 クロの殺気にみるくが反応してしまった。 銀が視線を向けた先には攻撃色に満ちた大きな双眸があった。 いつの間にか乱杭歯が鋭い尖りを帯びていた。 「ぷぎぎゃー!」 おたまが反応して少年の背中に大慌てで隠れた。 気性の荒い魔獣の如く殺気立つみるく、その一瞬の変貌に少年は思わず息を呑む。 そんな少年をさらに庇うようにして立ち塞がるクロ。 袖口から愛用のメスを瞬時に取り出し、いざという時のため、構えた。 銀はまじまじとみるくを見つめた。 自分自身を壊れ物のように抱く腕の力加減はそのままだ。 しかし愛くるしかった表情は一変し、外敵と見做したクロをぎっと見据え、唸っている。 体中の血管がざわざわ脈打っているようだ。 まさかこの子にはもう一段階、変身形態があるのでしょうか?

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