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腕の中で苦しそうに息をする銀。
眠りに落ちて、痛みに魘される彼に、みるくは大きな双眸をたちまち不安で濡らした。
「まま、まま」
みるくはぎゅっと銀を抱きしめた。
前回はそれで落ち着いた銀が、未だ苦しそうな呼吸を繰り返している様に、泣き出しそうになる。
「まま……」
目覚める気配もなく悪夢に蝕まれていくような銀にみるくはとうとう、ぽろっと、涙をこぼした。
「まま、死なないで」
夢を見ていたような気がする。
あの子が泣いている夢だ。
ああ、可哀想に、みるく。
どうか泣かないで……?
無意識に掲げた指先が何かに触れた。
その感触に銀は目を覚ました。
目を覚ました瞬間、我が目を疑った。
こんなソファ……アジトにありましたかねぇ?
黒いふかふかのソファだ。
暖かく、肌触りもよく、マッサージ機能でもついているのか、微妙に動いている……。
陰惨極まりないラボ内に積み重ねられた血塗れのケージ奥で騒ぐ眼達。
彼らの怯えっぷりに銀は眉根を寄せ、ゆっくり、起き上がる。
「くるる……」
その鳴き声に銀は顔を上げた。
視線を向けた先には。
不可思議な大きな目をした、尖った耳をつけた、長い尻尾を生やした、漆黒のドラゴンがいた。
銀はまた目を見開かせる。
周囲を見渡せば、寝ていたはずの手術台はぺちゃんこ、鋭利な器具も床にぶちまけられていた。
銀の目を最も引いたのはボロボロに破れた縦縞の囚人服つなぎだった。
何度もその服とドラゴンを交互に見比べる。
そして一つの結論が血に浸したような唇から零れ出た。
「貴方……みるくですか?」
「くるるるる!!」
嬉しそうに鳴いたドラゴンみるくに、銀は、しばし次の言葉を見失うのだった。
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