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「まま、まま」 みるくは大好きな銀を抱きしめて子守唄を紡ぐように彼を呼ぶ。 みるくの腕の中で銀は眠っている。 長い銀髪は血塗れの白衣に滑り落ちて、嗜虐的唇は睡魔によってやんわり閉ざされていた。 「まま、好き、みるく、好き」 みるくの背中に目覚めた漆黒の大きな翼。 まるで腕の中の銀を守るように、それは器用に折りたたまれていた。 先刻、漆黒のドラゴンと化したみるく。 激痛に魘される銀の苦しみを少しでも和らげたく、死なないでと祈り、この全身全霊でもって抱きしめてあげたいと願ったら。 最終形態に至った。 まるで母親が孵化を待ち焦がれて命宿る卵を温めるように、その懐で、銀を眠らせた。 翼あるドラゴンの真心こもった聖なる恩恵により銀の痛みは取り除かれた。 痛みどころか傷口までも癒された。 「貴方……みるくですか?」 「くるるるる!!」 起き上がった銀にみるくは擦り寄ろうとした。 が、サイズがあまりにも違いすぎて、うまくいかない。 「くるるるるぅぅ……」 みるくが寂しげな鳴き声を出すと銀は微かに笑った。 何物をも容易く引き裂く鋭い鉤爪もつ前脚に、ぴたりと、手をあてがう。 「大丈夫。僕ぁここにいますから。姿かたちが違おうと、こうして貴方と触れ合っていられますよ、みるく」 みるくは不可思議な大きな目をばちんばちん瞬きさせた。 この姿では大好きな銀に抱きつけない。 すぐそこにいるのに、なんだか、遠い。 もっと自分から銀に触れたいのに。 そんな思いが高まった瞬間。 瞬きよりも短い速度で、みるくは、前段階のサイズに戻った。 「……存外、貴方は器用な魔物なのですねぇ、みるく」 一瞬にして翼あるドラゴンから人型へと姿を変えたみるく、その幻影じみたメタモルフォーゼに銀は惚れ惚れする。 ただ、前の人型と違い、その背中には最終形態の名残りを残す漆黒の翼が翻っていた。 「ままー!!」 すっぽんぽんの猫耳みるくは銀をぎゅっと抱きしめた。 「まま、まま、まま」 「はいはい、ここにいますから」 「まま、ここにいる!」 「いますよ、貴方の腕の中に」 銀は息苦しいくらいの抱擁に身を委ねる。 みるくのためじゃない、自分が、それを望んでいるから。 心地いい温もりにしばし溺れていたかった。 「まま、好き」 「ええ、僕も貴方のことが好きですよ、みるく」

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