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16-おたまが大きくなりまして

月明かりを反射してきらきら光る夜の小川。 鬱蒼と連なる茂みの向こうでは虫達が鳴いている。 「お昼に見るよりも、もっと、綺麗です」 さらさら流れる小川の岸辺、クロに導かれてやってきた海は昼とはまた趣き異なる幻想的な景色に見惚れていた。 小さな恋人が控え目にはしゃぐ様を見下ろしてクロは小さく笑った。 海は林間学校で山深い田舎にまでやってきていた。 五日間、自由研究発表や地元民との交流会、レクリエーションなど、予定はいっぱいで。 だけどいつだって海はクロのことを思っていた。 そんなときにクロはやってきたのだ。 夜中、誰もが寝静まった宿泊施設、恋人に預けてきたはずのおたまに起こされて、こっそり寝床を抜け出して右へ左へ浮遊する彼についていけば。 「こんばんは、海」 薄闇の色に白衣を染めたクロが雑木林を背にして海を待っていた。 「寒くないか?」 「大丈夫です」 「本当に?」 夜になると昼の熱気が失せて一段と冷え込む山間部。 水辺だと尚更冷気が増す。 パジャマ姿である海の、気を遣わせまいとする返答にクロはまた小さく笑った。 速やかに脱いだ白衣を海の華奢な肩にかける。 小川ではおたまが水遊びをしていた。 ぱしゃぱしゃと水音が木霊し、無数の飛沫が澄んだ夜気に美しく瞬いていた。 「クロさん、どうやってここまで来たんですか?」 「おたまに乗って」 「……え?」 「おたまはつい昨日、成長の最終完全形態に至った」 「えっと……最終完全形態って、ガマガエルとかトノサマガエルに……ですか?」 「いいや、あの成りのまま、さらにでかくなった」 「……」 「もう自分でサイズをコントロールできる」 「……すごいです」

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