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「クロさん……」 耳元で囁かれた台詞に海の紅潮が鮮やかに色味を増した。 クロは海の背に両腕を絡めると、おもむろに、身を起こす。 寝台がぎしりと音を立てた。 「ひゃ……」 膝上に抱き上げられた海は思わず縮こまった。 白衣をぎゅっと両手で握り締め、クロに片頬を押しつけ、深部にまで潜り込んできた熱源に切なそうに眉根を寄せる。 はぁはぁ乱れる吐息を呑み込もうと唇をきゅっと噛んだ。 「海」 とても優しい声。 クロさん、今日はどうしたのかな……。 いつもよりちょっと……激しいというか……え……えっちな気が……します……。 海は少しだけ正面の距離を空けておずおずと顔を上げた。 すでに自分を見つめていたクロと目が合い、今更ながらどきっとする。 クロは海と視線を繋げたまま緩やかに動き始めた。 「ぁ……っぁ……んっ……」 あ……なんだろう、この感じ。 ちょっと恥ずかしいけれど安心するような。 「……どうした?」 「ん……クロさんと目が合ってたら……ほっとします」 か細い腰に手を添え、海の言う通りすでに自分の残滓でいっぱいなナカをクロは大きく掻き回す。 肉同士の擦れ合う音色はひどく粘着質でえもいわれぬ雰囲気を高めるようで。 「俺も同じだよ、海」 シャツが脱げかかっていて海の片方の肩が露出している。 艶めく肌は舐めれば蜜の味がしそうな気がする。 まぁ、実際はそんなことなかったが。 「あ……んっ」 クロの肩にぎこちなく両腕を預けた海は、粘膜深みまで抉じ開けられて緩々と腰から下を揺さぶられ、ぎゅっと目を瞑った。 だが、また恐る恐る薄目がちになって、クロを健気に見つめ返してきた。 「クロさん……」 「うん?」 「僕……ここにいるよ?」 「……」 「どこにも……行かないよ……?」 愛しい人が記憶を取り戻しても尚、幾許かの心細さを精神的外傷の如く引き摺っていたクロの思いまで海に流れ込んだらしい。 あまりにもいじらしいことを言う海の唇にクロはキスした。 キスを交わしながら、また、海をマットレスの上に寝かせる。 徐々に律動を速めていく。 「ん……はぁ……ぁ……」 もう何度か絶頂を迎えている体はビクビク震えっぱなしだ。 優しく深みを貫く度に甘い声を惜しみなく奏でてくれる。 「ぁ……また……っ……僕……」 「ん……俺もいくから」 我が身を包み込んでくれる柔らかな粘膜の壁が狂おしい収縮を始める。 ずっと隆起させられている海のモノがひくひくしているところを見ると、次の放精はもうすぐそこまで迫っているようだ。 「海、一緒に」 黒縁眼鏡のレンズ越しに真摯に見つめられて、海は、小さく頷いた。 するとクロはもっと勢いをつけて海の深いところを立て続けに突くようにした。 近づく極みに全身が張り詰める。 それでも伏し目がちに海を見つめ続ける。 「あっあっ……クロさん……」 俺をいつまでもお前のものでいさせてくれ、海。 「わぁ、すごい、すごいです、おたま」 「ぷぉぉぉぉぉ!!」 「海、あまり俺から離れるな」 海とクロを乗っけた最終形態メガおたま。 光り煌めく夜景を遥か下にして、満月を頭上に、風吹き抜ける上空をのんびり泳ぎ回る。 「クロさん、おたま、すごいですね」 心地いい風に髪を煽られて地上よりも近い月明かりの元。 澄んだ双眸を露にした海は満面の笑みで表情を飾っていた。 滅多に見られない全開の笑顔にクロはずっと胸きゅん状態で。 ぎゅっと海を抱きしめた。 「おたまを魔界から召喚した俺もすごいって、そう褒めてくれ、海?」 「……クロさん、可愛いです」 「ぷぉぉぉぉ!!」 「あ、おたまも可愛いよ?」 クロの腕の中で海は幸せそうに笑う。 おたまの上で、月明かりの中で、二人は誰に知られることなくそっとキスをした。

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