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17-マッドネスで真夜中のプール

閉館時間をとっくに過ぎて無人であるはずの屋内プールにちらほら過ぎる人影。 最低限の照明が点る薄明かりの中で水音が行き交う。 「やっぱり真夜中の屋内プールって快適でいいわぁ」 マッドネスのマッドサイエンティスト、ビキニ水着のDr.グラマラスがデッキチェアで優雅に足を組む。 連れてきたペットのマンボウとシーラカンスが深いプール底でのんびり泳いでいるのを微笑ましそうに眺め、おやつを投げれば浮上して鯉さながらにぱくぱく口を開ける様に「イイコね~」と親ばか丸出しで褒めている。 「ああ、うるさい」と、眼帯をつけたままのDr.アイレスはプールサイドの喧騒に眉根を寄せた。 お笑い芸人がコントで着そうな黒白ボーダーのつなぎ水着を着て、ちゃんと水泳帽も被って浮き輪に乗っかり、ぷかぷか揺れている。 すぐそばではお揃いの格好をした人型クロウが立ち泳ぎでくっついていた。 「クロウ、あっちへ連れてお行き」 「……あぃ、ごしゅじんさま……」 麗しの美男子アイレスも、贅肉一つない美しい肉体のクロウも、コント水着を恐ろしく着こなしている。 そこへ。 ウォータースライダーを滑り落ちてきた誰かさんがどっぼーーーんと突っ込んできた。 「うみゃー! すごい! あれすごい!」 「滑り台、そんなに気に入りましたか」 「うみゃあ!!」 猫耳魔物のみるくは初めてのプールにずっと興奮しっぱなし、プールサイドに立つDr.銀にぶんぶん手を振ってみせた。 「ままも! ままもいっしょ!」 「僕ぁ金槌なんです」 きらきら輝く笑顔で、猫耳なのに犬掻きで近寄ってきたすっぽんぽんみるくに、銀はしゃがんで言って聞かせてやる。 当然、みるくが「金槌」の意味を知るはずもなく。 「ままもいっしょ!!!!」 そう言って興奮マックスのみるくは銀をプールの中へ……。 どっぼーーーーん!! 「ああ、うるさい……」と、頭からずぶ濡れになったアイレスはぼそりと呟く。 「クロウ、お前が遅いから濡れちゃったじゃない、この愚図!」 「あぅ……、くろう、わるいこ」 「いい加減クロ様にナノ単位でもいいから近づいてよっっ!お前ほんっっと誰なのっっ!?」 「あぅ……」 いつものヒステリーを起こすアイレスにへこへこ謝るクロウ。 一方、プールサイドでピンヒールを鳴らしながら、グラマラスはプールに引き擦り込まれた銀に声をかけた。 「ちょっとぉ、金槌さん、だいじょぉぶ?」 「貴女に心配されて胃腸の辺りが少々むかつくといった程度でしょうか」 解けた長い銀髪を濡らして、血塗れの白衣の裾を水面に漂わせて、銀は水中で自分を抱えるみるくを見下ろした。 「まま! いっしょ!!」 零れんばかりの眩い笑顔でみるくは銀を見上げている。 銀はつられて血に濡れたような嗜虐的唇をやんわり綻ばせた。 「あと少しだけ、みるくに付き合ってあげましょうかねぇ」 「あらそぉ。それにしても眼福ねぇ、んふふ」 「みるくを視姦しないでくださいね、目ん玉、抉りますよ?」 「あらやだぁ、溺愛しちゃって、んふふ」 マンボウとシーラカンスを引き連れて銀を抱っこしたまま器用にすいすい泳ぎ回るみるく、そんな一行をちゃぷちゃぷ避けるアイレスとクロウ、彼らをプールサイドから眺め回す痴女グラマラス。 屋外プールではクロと海が着衣もそのままに月を頭上にして。 「クロさん、ただいま」 「おかえり、会いたかったよ、海」 林間学校から帰ってきた海を抱きしめて、クロは、やっとその唇にキスをする。 さすがのおたまも今回は邪魔をせずに端っこでぷうぷう狸寝入りするのだった。

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