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銀は分厚い丸眼鏡の奥で濡れた光を常に帯びる妖しげな双眸をすぅっと細めた。 一人掛けのソファに座ったイヴレスは肘掛に頬杖を突いている。 みるくと同じ、なんとも例えようのない不可思議な色を帯びた双眸が意味深に煌めいたような。 「失礼」 「……貴男、心が読めるのですねぇ、恐れ入りました」 「普段はちゃんとセーブしているよ」 銀は膝上ですやすや眠るみるくを見下ろした。 それはそれは幸せそうな無防備な寝顔。 半開きの唇をなぞってみれば、ぱくっとくわえ、赤ちゃんみたいにしゃぶってくる。 銀はぐるぐる巻きにした襟巻の下で嗜虐的唇を自然と緩めた。 「アマラントス、その意味をご存知で、しろがね?」 「いつかは枯れ果てる僕のそばにいるより〈はらから〉と共にいた方が幸せでしょう」 「いやん、なにそれ、泣けちゃう」 「泣いたらマスカラがとれて世にもおぞましい素顔と化すので我慢なさいな」 銀はグラマラス・ラボを後にした。 ケーブルや配管が剥き出しの曲がりくねった通路を歩み、自分のラボに到着する。 吹き抜けの高い天井、血塗れのケージが高々と積み上げられ、中では無数の眼達が不穏に光る。 壁には無数の蔦が絡みついて毒々しい色合いの果実をぶら下げている。 陰惨な雰囲気漂う、薄暗い、じっとりとしたラボ。 『ままー』 「ああ、もう……なんだか気分が滅入りますねぇ……こんな時は創造するに限ります」 ゲテモノクリーチャーをこさえてヒロインにまた嫌がらせしてやろうと、銀は、着替えるのも面倒で変装衣装を纏ったまま、変態マッドサイエンティストの顔へと変貌を遂げた。 まるでみるくへの未練を断ち切るようにメスを振るって。 「ままー?」

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