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「グラマラス、どこか高いところへ行きましょう」
「おっけー」
ドルルルルっと接触寸前ぎりぎりまで体を地面に傾け、華麗にカーブを切って、複数なるお巡りさんの制止を振り切って。
グラマラスは高層ビルの一階フロアに突っ込んだ。
自動ドアの開閉が間に合わずにガラスがど派手に砕け散る。
破片がきらきら舞う。
銀は首を窄め、ぐるぐる巻きにした襟巻にさらに顔を埋めた。
すでに各階オフィスの人々は避難して無人となったフロア、バイクは洗練されたロビーを豪快に横切ってエレベーター前へ。
ひらりと降り立ち、銀がボタンを押せば「チン」と扉は左右に開かれた。
「行って、銀」
「貴女は?」
「私はこっそり資金調達活動してくるわ」
抜け目ないグラマラスはドルルルルっと来たルートを引き返していく。
彼女と別れ、銀は、高層ビルの最上階を一人目指す。
『みるくのこと、守ってやんなさい』
「ええ、そうですね、グラマラス」
育児放棄した僕ぁとんだ過ちを犯しました。
早くあの子を安心させてあげたい。
みるく、貴方は僕の…………。
光り瞬く夜の街。
吹きつけてくるビル風に煽られながら、銀は、喧騒の洪水を下にして街明かりを反射する屋上から彼の名を叫ぶ。
「みるく!!!!!!!!!」
聞こえますか?
届くでしょうか?
僕が貴方につけた名前。
「やぁ、こんばんは、しろがね」
手摺りに囲まれた屋上の縁、振り返った銀の視線の先には。
貯水タンクの天辺に優雅に腰掛けるイヴレスの姿が。
「イヴレス、貴男は、一体何を」
「何も。私は何もしていないよ、しろがね」
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