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アマラントス、勝手に暴走してしまってね。
抑えつけるのも可哀想だし、目下、好きにさせているところだよ。
その回答を聞いた銀は渦巻き丸眼鏡越しにイヴレスを見据えた。
月のない夜空の下、吹き荒ぶ風にプラチナブロンドを乱しもせず、イヴレスはまた答える。
「アマラントスが傷つく? その前に我が子は危険対象を消滅させるはずだよ、だから大丈夫」
「…………」
「おかしなことを言うね。君は世界征服を目的とするマッドネスという組織に属しているというのに。我が子が代わりに破壊してあげているのだから、感謝したらいい、それで済むことじゃないの?」
「僕とみるくを一緒にしないでくださいねぇ、イヴレス?」
僕は明確な目的でもって世界を破壊します。
でも、あの子は、違います。
そんな目的など持っちゃあいません。
悪戯にあの子に咎を背負ってほしかぁないんです、僕ぁ。
「小さい小さい、そんな心配、無用だよ」
魔界の超上級魔物に何を言ったところで徒労に終わるだけだろう。
銀も言い合いを長引かせるつもりはなく、再びいとし子の名を呼ぼうと、ビルディングの海へ視線を戻してみたら。
ばっさばっさと漆黒の翼を翻して。
空中に留まるドラゴンが目の前に。
「みるく」
炎の吐き過ぎで口元が焦げている。
ビル壁で傷ついたのだろう、漆黒の鱗が部分的に剥がれ落ちて、血が。
翻る翼が突風を起こして渦巻き丸眼鏡が吹っ飛んだ。
咄嗟に片腕を翳し、その腕越しに、銀は改めてドラゴンみるくを見つめる。
「くるるるるるるぅぅ…………」
さみしかった。
さみしかった。
さみしかった。
まま、いない、みるく、さみしい。
みるく、ままいない、こわい。
でも、まま、みつけた。
「みるく…………」
まま、まま、まま。
みるく、ずっと、ぎゅってして。
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