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最近のクロは海を自宅近くまで送ることにもはまっていた。 白衣を黒いパーカーに変えただけの格好で地上に平然と出、海の横に並び、公共交通機関をよく利用するようになった。 ちなみにメガおたまに乗るのはもっぱら真夜中に限られている。 夕日と宵闇が隣り合う空、日暮れがすっかり早くなった黄昏の並木道を二人で歩いていたら。 丁度差し掛かろうとしていた街路灯に明かりが点った。 すると、前方に連なる街路灯が順々に灯火に彩られていく。 木枯らしに舞う落ち葉の裏表が明かりの中で交互に浮かび上がっては舗道に着地する。 「クロさん、寒くないですか?」 自家発電中のぽかぽかおたまを胸に抱く海に問われて、クロは、頷いて。 その直後にクシャミをした。 海は慌てて巻いていたマフラーを外す。 「これどうぞ。帰りも巻いていってください」 「巻いてくれ、海」 クロが屈んだので、海は彼の首にぐるぐるマフラーを巻きつけた。 背中に張りついたおたまがじんわり温かい。 「ありがとう、海」 曲げていた背中を伸ばしたクロの頭上には街路灯の優しい灯火が。 不思議です。 一色なのに、お星様もないのに。 昨日見たクリスマスツリーの明かりより綺麗に色鮮やかに見えます。 クロさんが一緒にいるから? 「……クロさん」 「ん」 「まだ、もうちょっと、この辺を一緒に散歩してもらってもいいですか?」 パーカーのポケットに両手を突っ込んでいたクロは答える。 「俺もそう言おうと思ってた」 もしもあの物語のように悪魔の作り出した鏡の破片が心臓と目に突き刺さり、世界が百八十度変わってしまったら。 美しいものを醜いと感じるようになってしまったら。 「クロさん、おたま、こんなにあったかいで、す……」 最近、絵本の読み聞かせで感受性が一気に豊かになってしまったクロ。 胸騒ぎに心を射貫かれて、抑えきれずに、膝を突いてまでして海をその場でまた抱きしめた。 最近、やたら抱擁されてばかりの海はくすぐったいやら、でも本当は嬉しいやらで。 なかなか離れたがらないクロをよしよしと撫でてあげるのだった。

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