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銀は自分の膝枕ですやすや眠るみるくを見下ろし、その髪を梳いて、猫耳を撫でてやりながら、囁く。 「揺り篭の中の自由なんてクソ食らえですよね、ねぇ、みるく?」 純粋なみるくのために銀は研究所を裏切った。 みるくを魔界へ戻すため。 自由な世界へ、もう一度、孵すため。 結果。 「銀!!!!!!」 助太刀したおかげで拘束されたグラマラスやアイレスの視線の先で、武装実行部隊から放たれた弾丸が、銀の体を貫いた。 意味もわからずに鬼ごっこだと思ってはしゃいでいたみるくの目の前で。 白が赤に染まる。 「まま?」 右肩を撃たれた銀は激痛に骨身を犯されながらもみるくに微笑みかけた。 「まま」 「早く、行きなさい」 「まま、まま、まま」 「自由になりなさい」 みるくは銀に笑い返す。 「自由よりままといっしょいたい」 久方ぶりにみるくはドラゴンへメタモルフォーゼを遂げた。 その大きさは前回を遥かに凌駕する完全形態に至ったもの。 猛々しい翼を広げ、蒼白の炎を連ね、ドラゴンみるくは研究所をめちゃくちゃに破壊した。 クィーンはさっさと飛び去っていったのに対して。 彼は愛情深く育ててくれた仮初の親達、グラマラスとアイレス+クロウを森の深部にある研究施設から遠く離れた海岸線まで背に乗せて運んだ。 断崖絶壁へ彼らを下ろしたドラゴンみるくは「じゃあねー」という風に片翼をばさばささせて上空へ再び舞い上がる。 グラマラスは手を振り、アイレスは眩しそうに片手を頭上へ翳し、クロウはその仮面に涙のマークを浮かび上がらせた。 美しい黒竜は飛翔を続ける。 眠りについた銀を背中に乗せて。

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