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目を開くと金色の満月が視界に飛び込んできた。 銀は何度も瞬きする。 上空の月を写す水面、鬱蒼と広がる緑。 ここはどこでしょうか……。 そこは砂漠上のオアシスだった。 飛翔を続けた黒竜が休憩に立ち寄ったのだ。 当の黒竜は人の姿となって、ずーーーっと、銀を抱きしめていた。 「あ、まま、起きた!」 腕の中の銀が目覚めたことにみるくは飛び切りの笑顔となる。 すっぽんぽんだ。 背中に生やした大きな翼を器用に折り畳み、夜風から銀を守っている。 「ままー」 ごろごろ擦り寄ってくるみるくを銀はぼんやり受け止める。 僕ぁ撃たれましたよね。 白衣もこんなに真っ赤になって。 それなのに痛みを感じません。 聖なるドラゴンの息吹により傷を癒されていた銀は、ただ不思議そうに常に妖しげに濡れた光帯びる双眸を瞬きさせていたが。 ゆっくりと、解けたように、微笑した。 「貴方が僕を救ってくれたんですねぇ、みるく」 「まま、好き、みるく、好き」 「すっぽんぽんで寒いでしょう」 「へっちゃら、みるく、ままがいればなんにもこわくない」 荒涼たる砂の海、そこに幻影の如く佇む瑞々しいオアシスで。 銀は自らもみるくに寄り添おうとした。 すると。 「ぶえっくしゅん!!!!」 みるくがくしゃみした。 ドラゴンであればそれこそへっちゃらだろうが、人の姿だと寒さも普通に感じ取るらしい。 銀は深紅に半分染まった白衣を脱ぐと、みるくを寝かせて、自分も添い寝し、白衣をばさりと上からかけた。 翼がはみ出すのはしょうがない。 「ふえーあったかい!」 いつも白衣で隠されていた細身の体にしがみつくみるく。 銀は好きなように甘えさせてやり、その頭を撫でてやる。 「ままとみるく、ずっといっしょ」 「ええ、そうですねぇ」 「まま、みるく、つがい」 ああ、この子はまたお馬鹿さんなことを。 「親子」を「番い」と間違えるなんて。 でもまぁ、貴方と(つい)になるのもそれはそれで幸せかもしれないですねぇ、みるく? みるくは大好きな(かいな)の中で愛しい温もりを好きなだけ食べて。 銀は恋の卵を胸の内で孵らせたのだった。

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