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ソファの後ろに立つイヴレスは、相変わらずブラックを基調とした三つ揃いスーツという、普段着とは思えない無駄にキメキメの姿で。
まるで聖夜に舞い降りた悪魔のような。
日光ではなく月光を糧とする眷属のような。
自分こそ最も謎の塊じみた彼は銀の絹糸に何の許可もなしに片頬を埋めた。
「そうだ、今日は私と君と二人で服を買いにいこう」
「あんまり僕にべたべたしないでくれます?」
「その格好はあんまりにも君に相応しくないからね。私が見立ててあげる」
「とりあえず離れてくれます?」
「綺麗な髪、でもちょっとカットしてみたら?」
「イヴレス、聞いてます?」
銀は振り返る。
切れ味鋭いメスをいつの間に片手に翳し、不可思議な色を帯びた双眸と、銀縁眼鏡の間に、割り込ませた。
「僕ぁ、他者との触れ合いが苦手でしてねぇ」
銀の物騒なリアクションに機嫌を損ねるどころか、イヴレスは、それはそれは少年のように溌剌と笑った。
「本当、君みたいな人間って初めて」
ところでイヴレスの嗜好というのは実に複雑にできていた。
魔界に属するものであれば、下級だろうと、姿形がいかにグロテスクだろうと、共鳴し胸動かされるものがあれば交わりをすぐさま望む。
人間界に属するものであれば男女問わず、真っ先に容姿を重視し、すぐさまベッドインを望む。
そしてすべてに共通すること、それは、一夜限り。
正しく「えろおやじ」なる超上級妖魔なのである。
そんな「えろおやじ」なるイヴレス、銀の振り翳すメスに美しい五指を平然と絡めてみせた。
「アマラントスのことはずっと抱いてるじゃない」
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